タバコが肺気腫を引き起こすメカニズムとは?

2017/12/22 記事改定日: 2018/12/5
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肺胞が破壊されることで肺の機能が低下し、息切れや動悸を引き起こす肺気腫。
この肺気腫の最大の原因はタバコといわれていますが、果たしてそれは本当なのでしょうか。
タバコが肺気腫を発症させるメカニズムや、タバコの害について解説していきます。

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肺気腫の主な原因はタバコ?

肺気腫とは、肺の中にある肺胞という部位が破壊されていくことで、肺の機能が正常に働かなくなる病気です。
酸素の供給が正常に行われないので動くと息切れを起こすようになり、そのほかにも咳が出るようになったり、痰が増えたり、少し動いただけでドキドキと動悸がしたりすることもあります。

肺気腫は高齢になるほど発症しやすくなり、男女比は3:1で男性の方が発症率が高い病気です。肺気腫の恐ろしいところは、一度なってしまうと元の状態に戻ることがないというところです。

そして、肺気腫を発症する人のほとんどが喫煙者であり、発症に大きく関わっていると考えられています。

肺気腫を発症した人のほとんどの人が喫煙者か喫煙経験者であり、肺気腫は高齢になるほど発症率が上がりますが、これは喫煙をしていた期間と関係しているとも考えられています。そして、喫煙期間が長いほど肺気腫を発症するリスクが高くなるとされているのです。

タバコの煙にはたくさんの化学物質が含まれていますが特にニコチン、タール、一酸化炭素が悪影響を及ぼします。
受動喫煙も発症に関係しており、自分では喫煙していなくても、タバコの煙を吸う時間が長いほど発症リスクが高まります。

なお、喫煙以外に大気汚染や産業粉塵、乳幼児期の肺炎、ダニやほこりなどの住環境も発症原因となります。

タバコが肺気腫を引き起こすメカニズムは?

タバコは肺気腫の主な原因の一つです。

タバコには様々な有害物質が含まれており、喫煙を続けると有害物質が肺の組織に慢性的な炎症を引き起こることで肺胞が破壊され、肺気腫を発症するのです。

また、自身が喫煙しない場合でも、周囲の人がタバコを吸う際の煙を吸い込むことで肺気腫を発症するリスクが高くなることもわかっています。肺気腫をはじめ、タバコは多くの病気の原因となりますので、家族をはじめ周囲の人へも喫煙を勧めることが大切です。

タバコが体にもたらす悪影響

喫煙の健康被害は、肺気腫の発症だけではなく、全身の臓器に悪影響を与えます。たとえば、喫煙をする時に体内に取り込まれた化学物質により、血管が収縮する作用があらわれます。血管は全身に巡っているので、全ての血管に喫煙の影響がでます。すると血管が収縮することで、血管が詰まって起こる脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。

そのほかにも腹部大動脈瘤などの血管の病気も起こしやすくなります。また煙を吸い込む時に喉を通って肺に入ることから、肺がんだけでなく食道がんなど、肺以外の部位のがんの発生率が高まります。なお、妊娠中の女性が喫煙をすることで生まれてくる子どもが低出生体重児になったり、妊娠中の合併症が起こりやすくなります。

肺気腫の治療に禁煙は必要。

肺気腫は一度なってしまうと、そこから肺の機能を元に戻すことは大変難しく、病状を進行させないようにすることが一番の治療になります。そのためには、禁煙することが最も有効になるでしょう。

ほかには、呼吸機能を保持するために呼吸法をトレーニングすることも効果があります。それ以外にも適度な運動を続けたり、食事をしっかり取って栄養をきちんと取ることも治療のひとつです。

やめられないときはどうする?

禁煙が最も大切だとわかっていても止められない人が多いのは、タバコに含まれるニコチンに依存性があるからです。

体がニコチンを取り込むことに依存してしまうと、止めようと思ってもなかなか止められません。ニコチン代替療法などあるので医師に相談してみましょう。
それ以外にも、禁煙を成功させるために家族に協力してもらうなど工夫してみると良いと思います。

禁煙のサポートをする「禁煙外来」とは?

禁煙外来では、自分の意志だけでは禁煙できない人を医学的にサポートして禁煙を促す治療を行います。
禁煙外来は主に禁煙治療経口補助薬であるチャンピックス®による薬物療法が行われます。チャンピックス®は、脳内に形成されたニコチン受容体をブロックすることで、ニコチンへの欲求を軽減する効果があります。従来のニコチンパッチなどを用いたニコチン代替療法よりもはるかに高い禁煙成功率を期待することができます。

また、禁煙外来に指定された医療機関では、タバコを吸っている年数や本数によってチャンピックス®の処方が保険適応になります。
肺気腫などの病気で禁煙の必要があるのに、自分の意志だけでは止められないという人は、禁煙外来で相談してみることをおすすめします。

おわりに:肺気腫の主要原因は喫煙。一日も早い禁煙を!

肺気腫の主な原因は喫煙習慣です。そしてタバコは肺気腫をだけでなく、さまざまな病気のリスクを上昇させます。
喫煙者の方は、一日も早く禁煙を始めましょう。
もし自分の意志だけでは止められないという人は、禁煙外来を試してみることをおすすめします。

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