記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/14 記事改定日: 2018/12/5
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「肺気腫」という病気をご存知でしょうか。喫煙者の方であれば、タバコのパッケージの警告文などで一度は目にしたことのある病名かもしれません。以降で、この肺気腫の症状や原因、治療法など全般的な情報をお届けしていきます。
肺気腫とは肺にあるブドウの房のような形をした肺胞と呼ばれている部分の組織が破壊された状態をさしており、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に含まれます。
普段、人は呼吸で空気を吸ったり吐いたりすることで肺に酸素を取り込み、二酸化炭素を放出していますが、このときに重要な機能は、この肺胞の部分で行われる酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換と言います)です。
しかし、肺気腫を発症して肺胞の組織が破壊されると、酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなります。すると、息を吸うことはできても、吐くことが困難になってしまいます。これが肺気腫の特徴的な症状です。
一般的に肺気腫になると、日常生活での動きのなかで息切れが生じてくることが多くあります。その他、咳や痰、喘鳴(ヒューヒューという感じの音)、浮腫、体重減少がみられることもあります。
上記の症状のなかでも、特に息切れは日常生活に支障をきたしやすい要因となります。動くと息切れがするために次第に活動量と範囲が制限され、結果として体力の低下や息切れの増強を招く悪循環が生じやすいのです。また、咳や痰も生じることが多いため、体力を消耗しやすくなる要因となります。
さらに息切れや咳、痰が頻回に続くことによって首や肩まわりの筋肉が固くなり、結果として呼吸がしにくくなり、首まわりの筋肉が浮き出てくるような症状がみられることもあります。
喫煙者に多くみられる病気であるとされていますが、その原因については明確になっていません。しかしながら、日本においては1930年代~1970年代まで煙草の消費量が増加し、その約30年後において肺気腫での死亡者の増加がみられているということから、煙草の煙などに含まれる有害物質を吸い込むことによって気管支の炎症が起こり、ついには肺胞組織の破壊を生じさせているのではないかと考えられています。
また煙草の他にも、日常生活上あるいは仕事上で大気中の有害物質や化学物質を継続的に吸い込むことが、肺気腫を発症する要因になっている可能性も指摘されています。
肺気腫の治療法は、症状の程度によって異なります。ただ重要な点は、肺気腫によって破壊された肺胞組織が元通りになることは困難だということです。
肺胞の数は約3億個あるとされていますので、正常に機能している肺胞がどのくらい残っているか、また正常に機能している肺胞をいかに温存していくかということが、治療上では重要になっていきます。
これをふまえ具体的な対処法としては、喫煙者であれば禁煙を徹底することが重要です。他には気管支拡張薬などの薬物治療があります。
また、できるだけ運動を行い筋力を維持すること、呼吸の際に息をゆっくり吐くなどの呼吸練習、高たんぱくの食事を食べることも重要です。さらに息切れが続くことで固くなりがちな首や肩周りの筋肉を柔らかくするようにストレッチを行うことも有効です。
肺気腫は、肺胞が破壊されて肺の容積が大きくなり、進行すると正常な呼吸が行えなくなる病気です。多くは、酸素投与や薬物療法、呼吸リハビリテーションなどを行って病気の進行を食い止めたり、呼吸機能の向上を目指す治療が行われます。
しかし、これらの対症療法によっても呼吸困難が生じ、日常生活に大きな影響を及ぼしているようなケースでは、著しい肺気腫が生じている病変部位を切除する「肺容量減量手術」が行われる事があります。
身体への負担を最小限に抑えるために、胸腔鏡を用いた手術が一般的ですが、切除部位が広範囲にわたる場合には、開胸手術が必要になることもあります。また、近年では気管支鏡を用いて気管支内に空気弁を留置し、肺気腫部位の空気の流入をブロックして病変部位をつぶすといった治療方法も研究されています。
肺気腫の最も大きな原因は喫煙です。タバコには、さまざまな有害物質が含まれており、喫煙を続けることで肺内に吸引された有害物質が慢性的な炎症を引き起こします。その結果、徐々に肺胞が破壊されて肺気腫を発症するのです。
また、肺気腫は喫煙者だけでなく、家族や周囲の人が受動喫煙を続けることで発症するリスクが高まります。受動喫煙とは、自身が喫煙していなくても、周囲の人が吸ったタバコの煙を吸入してしまうことですが、様々な健康被害を及ぼすことが分かっています。
肺気腫を予防するには、喫煙者が禁煙することはもちろんのこと、家族や周囲の親しい人にも禁煙を勧めるようにしましょう。また、レストランなどは全面禁煙や分煙している場所を選ぶのも受動喫煙を避けるための重要なポイントです。
一度破壊された肺胞組織を復活させることは難しいため、肺気腫を発症してしまった場合は、あくまで悪化を防ぐための治療が中心となってしまいます。肺気腫の発症には喫煙習慣が関わっている可能性が高いため、喫煙者の方は早めに禁煙をスタートさせましょう。
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