鼠径ヘルニアの手術で合併症になることはある?

2018/1/10 記事改定日: 2019/3/13
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

鼠径(そけい)ヘルニアとは、鼠径部の筋膜の隙間から腸の一部や腹膜の一部が飛び出してしまうことです。根本治療のためには手術が必要になりますが、鼠径ヘルニアの手術には痛みや合併症があるのでしょうか。
鼠径ヘルニアの手術と術後の注意点について解説していきます。

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鼠径(そけい)ヘルニアなるとどんな状態になるの?

鼠径(そけい)は、足の付け根の部分のことです。より具体的に書くと、恥骨の左右外側の股関節の前方部のことであり、股間の部分を構成する主要部分となっています。

鼠径ヘルニアとは、本来ならお腹の中に存在するはずである腹膜及び腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくるようになることを指します。

鼠径ヘルニアは子供がかかる病気のひとつではありますが、成人が発症するケースも少なくありません。
鼠径ヘルニアになると、下腹部から鼠径部に柔らかい腫れができ、初期のころは痛みはなく、指で押さえると腫れは引っ込みます。しかし、しばらくすると同じように腫れがでてきてしまい、進行すると次第に不快感や痛みが出てくることもあります。

鼠径ヘルニアはどうやって治療する?

鼠径ヘルニアを根本的に治すには、基本的には手術以外に方法はありません。
以前はヘルニアバンドと呼ばれる脱腸帯という医療器具で対処することもありましたが、現在では使われる機会は少なくなっています。

手術は鼠径を切開する方法と、腹腔鏡を使う方法があります。

切開
手術ができる条件が限られていて、術後の傷あとが大きくなるというデメリットがあるが、腹腔鏡に比べて手術時間が短く体への負担も少なくて済むことがメリット
腹腔鏡手術
全身麻酔が必要で手術時間が長く、医師の技術が求められるというデメリットはあるが、診断がしやすく術後の傷や痛みを小さく抑えられることがメリット

どちらの治療法を選択するかは病院や医師によって異なりますが、患者の症状や状態を考えて適切なものが選択され、組み合わせて行われることもあります。

手術後に合併症のリスクはある?

鼠径ヘルニアの手術は、治療方法が適切であるならば基本的には合併症がでることはないとされています。ただし、非常にまれにではありますが、術後に細菌感染や慢性疼痛などの合併症を起こす可能性があります。

また、手術後しばらくの間はしゃがんだり、座ったり、いきんだりしたときに痛みがでることがあることも知っておいたほうがいいでしょう。もし痛みが強くて日常生活に支障がある場合は、鎮痛剤を処方してもらえますのですぐに担当医に相談してください。

手術後の生活で気をつけることは?

鼠径ヘルニアの術後は、重たいものを持ったり、激しい運動などを行って腹圧がかかると再発したり、反対側の鼠径ヘルニアを発症することがあります。術後はなるべくお腹に力が入らない生活を心がけましょう。

元の生活に戻れる目安は手術方法によって異なります。メッシュなどの人工物で鼠径管を閉塞した場合は、術後一か月ほどで力仕事などに復帰することが可能です。一方、自家組織などを用いた手術を行った場合には術後2~3カ月は腹圧のかからない生活を送ることが望ましいと考えられます。

また、術後の合併症として、男性の場合は陰嚢に血液などの液体成分が溜まって腫れることがあります。術後は陰嚢の状態をよく確認して、腫れや痛みなどがある場合は速やかに医師に相談するようにしましょう。

おわりに:合併症になることはまれだが、手術後に痛みや傷口の腫れがみられるときはすぐに病院に相談を

鼠径ヘルニアの手術で合併症になることはほとんどないといわれていますが、決まった動作で痛みが起こったり、まれに細菌感染や慢性疼痛などの合併症が起こる可能性があります。
傷口の様子や痛みの状態は常に確認するようにし、激しい痛みや腫れなど、すこしでも不安があるときはすぐに担当医に相談しましょう。

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