記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2025/7/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
鼠径(そけい)ヘルニアとは、鼠径部の筋膜の隙間から腸の一部や腹膜の一部が飛び出してしまうことです。根本治療のためには手術が必要になりますが、鼠径ヘルニアの手術後は、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。この記事では、鼠径ヘルニアの治療方法と手術後の合併症、生活の過ごし方について解説していきます。
鼠径(そけい)とは「足(太もも)の付け根の部分」のことで、より具体的には恥骨の左右外側の股関節の前方部になります。鼠径ヘルニアとは、本来ならお腹の中に存在する「腹膜、及び、腸の一部」が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくるようになる病態です。鼠径ヘルニアになると、下腹部から鼠径部にやわらかい腫れが発生します。この腫れは、初期には痛みがなく指で押さえると引っ込みますが、しばらくすると同じように腫れが現れ、進行すると不快感や痛みが生じることもあります。
鼠径ヘルニアを根本的に治すには、基本的には手術以外に方法はありません。以前はヘルニアバンド(脱腸帯)という医療器具で治療することもありましたが、現在は使われる機会が少なくなっています。手術には、鼠径部を切開する方法と、腹腔鏡を使う方法があります。どちらを選択するかは、医療機関・医師の判断により異なりますが、症状・状態などを考慮し適切な方法が選択され、組み合わせて行われる場合もあります。
鼠径ヘルニアの手術は、適切に治療が行われている場合であれば、基本的には合併症が起こることはほとんどないといわれています。ただし、非常にまれにではありますが、術後に細菌感染・慢性疼痛などの合併症を起こす可能性があります。また、手術後しばらくの間は、しゃがむ・座る・いきむなどの動作をしたときに、痛みが生じる場合があります。日常生活に支障があるほど強い痛みが生じている場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。鎮痛薬が処方されている場合は、医師・薬剤師の指導を守って服用してください。なお、男性の場合は、陰嚢に血液などの液体成分が溜まって腫れることがあります。手術後は陰嚢の状態をよく確認し、腫れや痛みなどがある場合は、早めに医師に相談しましょう。
鼠径ヘルニアの手術をした後は、重たいものを持ったり、激しい運動をしたりした際に腹圧がかかると、再発したり、反対側の鼠径ヘルニアを発症する場合があります。手術後は、なるべくお腹に力が入れないように気をつけながら生活しましょう。元の生活に戻れる目安は手術方法によって異なりますが、一般的には、メッシュなどの人工物で鼠径管を閉塞した場合は、手術後1か月程度で力仕事などに復帰することが可能といわれています。一方、自家組織などを用いた手術を行った場合には、手術後2~3カ月程度は腹圧がかからない生活を送ることが望ましいといわれています。
鼠径ヘルニアの手術で合併症になることはほとんどないといわれていますが、決まった動作で痛みが起こったり、まれに細菌感染・慢性疼痛などの合併症が起こったりする可能性があります。傷口の様子や痛みの状態は常に確認するようにし、痛みや腫れなど、すこしでも不安があるときは、すぐに医師に相談しましょう。