肝癌(肝細胞がん)になると腹水が溜まるのはどうして?

2017/12/21

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肝臓は、代謝や解毒、排泄を担う重要な臓器です。肝癌(肝細胞がん)になると肝機能が低下するため様々な症状が現れますが、代表的な症状のなかに腹水があります。この記事では、肝癌(肝細胞がん)の症状と腹水が溜まるメカニズムについて解説しています。

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肝癌(肝細胞がん)について

肝癌(肝細胞がん)は、代謝、解毒、排泄をおこなう肝臓の細胞から発生する癌です。C型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝炎、脂肪肝など、慢性の肝臓病を持つ人に発生しやすいといわれています。これは肝炎ウィルスや過度のアルコール、脂肪の蓄積は、肝細胞を慢性的に傷つけてしまうため、長期にわたって肝細胞が炎症・再生を繰り返すと肝硬変へと進展したり、遺伝子の突然変異が積み重なって癌化を引き起こしてしまうからです。
肝硬変に進展している人ほど肝癌の発生率は高くなりますが、肝硬変に至っていない場合でも癌が発生することもあるため注意が必要です。

肝癌の代表的な症状

肝癌の初期には、自覚症状がほとんど現れません。そのため、定期検診や他の病気の検査の際にたまたま肝癌が発見されることも珍しくありません。

肝癌が進行すると、腹部のしこりや圧迫感、痛み、おなかが張った感じなどの症状が現れます。さらに進行して癌が破裂してしまうと腹部の激痛や血圧低下を起こします。
また、肝硬変に伴う症状として、食欲不振、微熱、おなかが張った感じ、便秘・下痢、黄疸などが挙げられます。肝硬変が進行すると、腹水が現れたり、肝性脳症という意識障害を引き起こすこともあります。

腹水が溜まるメカニズムとは?

肝硬変の症状の1つである腹水とは、お腹の臓器と臓器の間にあるすきま(腹腔)に水がたまった状態のことです。この水は血管やリンパから染み出したもので、タンパク質などの栄養分が含まれています。
腹水は、健康な人でも常に多少はたまっており、腸が動くときの潤滑油のような働きをしてくれています。通常であれば腹水があっても、体が再度吸収しながら一定の量を保っているのですが、病気など何らかの原因によって吸収される量よりたまる量が多くなってしまうと、お腹の臓器や肺が圧迫されて苦しいといった症状が出てきます。

肝癌の場合、血液中のアルブミンというタンパク質が少なくなることで腹水が発生します。さらに、癌が肝臓の血管を圧迫することで血液中の水分の流れが妨げられてしまうため、腹水の吸収が悪くなって大量にたまってしまうのです。

腹水が溜まったときの治療法

腹水にはもともと血液中に含まれていた栄養素が含まれているため、一気に抜いてしまうと体力の低下やショック状態を引き起こしかねません。そのため慎重に様子を見ながら、利尿剤を使うなどして少しずつ抜いていくことになります。薬でも改善しない場合は、細い管をお腹に刺して直接腹水を抜く方法がとられることもあります。
ただ、腹水の原因は肝機能の低下にあるため、腹水を抜いても再度たまってしまうことが多くあります。

おわりに:初期は無症状のため要注意。定期検査を忘れずに

肝癌には初期の自覚症状がほとんどありません。そのため慢性的な肝臓病を持っている場合には、自覚症状が現れてからではなく日頃から定期検査を忘れずに受けておくようにしましょう。

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