記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
指先が白や赤、紫色に変色するレイノー現象が特徴の「レイノー症候群」。このレイノー症候群を引き起こす関連性の深い病気としては、どんなものがあるのでしょうか?以降で解説していきます。
レイノー症候群は、膠原病などが原因でレイノー現象を起こす病態です。レイノー現象と言うのは、寒さやストレスで指の色が白くなったり、赤くなったり、紫色になる現象です。
指の細い動脈が寒さやストレスで収縮して虚血状態になった時は、指が白くなり、低酸素状態になると紫色になります。その後、血管が拡張するために過還流となって指先の色が赤くなります。このように、寒さやストレスで10~15分ほどの間に、指の色が白、紫、赤と3段階で指の色が変わる現象がレイノー現象です。痛みやしびれや冷感を伴うこともあります(軽症の場合は、紫色にはならないこともあります)。
レイノー病は原因となる疾患が特になく、左右の指に症状がみられますが、レイノー症候群は原因となる疾患があることや左右対称ではないことが特徴です。薬指に現れることが多いと言われています。
レイノー症候群の原因となる病気で多いのが、全身性強皮症です。全身性強皮症の患者さんのおよそ90%以上にレイノー現象が見られ、また全身性強皮症の患者さんが初診時にレイノー現象を訴える割合は約80%ともいわれています。
そのため、レイノー症候群と全身性強皮症は密接な関係があると言えます。レイノー症候群が酷くなると、潰瘍や壊疽(組織が死ぬこと)が起きることもあります。
なぜ、全身性強皮症ではレイノー症候群がおこるのかは解明されていませんが、サイトカイン(細胞から分泌されるタンパク質)の一種が血管内皮細胞を減らしていることが関連しているのではないかという説があります。
全身性強皮症は膠原病の一種です。膠原病は、本来は外敵を攻撃するはずの免疫機能が誤作動を起こして、自分自身の身体を攻撃してしまう、慢性で全身性の炎症性疾患です。強皮症には全身型と限局型がありますが、限局型の場合は皮膚症状のみで内臓は侵されません。
全身性強皮症になると、上記のようなレイノー現象や、指のこわばりやむくみがおこります。指がソーセージのようになることから、強皮症指やソーセージ様指とも呼ばれています。また、手や顔の皮膚が硬くなってつまみにくくなったり、口の周りの皮膚が硬くなって口が開きにくくなったりすることもあります。そのため顔の表情が乏しくなり仮面様顔貌となるのも、この病気の特徴的な症状です。それ以外にも、関節痛や逆流性食道炎など、多彩な症状を来すこともあります。
レイノー症候群の原因が判っている場合は、その疾患の治療を行うことが重要です。全身性強皮症以外にも、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群などの膠原病でも約30%の患者さんでレイノー現象が見られます。
レイノー現象に対する治療としては、血管を拡張する薬を使ったり、血流が良くなる薬を使います。具体的には、カルシウム拮抗薬やビタミンE剤、プロスタグランジン製剤などが使われています。
また、患者さん自身ができることとして、炊事やぞうきんがけの際はお湯を使う、外出の際は手袋を着用することが大切です。ポケットに使い捨てカイロを入れている、という患者さんも多いです。真夏でも冷房が効いている場所ではレイノー現象が出ることがあるので、ほとんど一年中、手袋は欠かせないという患者さんもおられます。冷やさないように保温することが重要です。
レイノー症候群の原因の多くは、全身性強皮症によるものです。ただし、原因疾患はほかにもあり、それぞれで治療法は少しずつ異なっていくので、レイノー現象が現れたらまずは病院で検査を受けるところから始めましょう。