糖尿病性ケトアシドーシスとはどんな状態?

2017/12/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病の急性合併症の一種に「糖尿病性ケトアシドーシス」があります。では、この糖尿病性ケトアシドーシスとは、具体的にどんな状態を指すのでしょうか。症状と併せて解説していきます。

糖尿病性ケトアシドーシスとは?

現代病の1つとして、いま、年配の人だけではなく若者にも多く見られるのが糖尿病です。糖尿病は糖を正常に代謝できなくなる病気で、血液中に糖が余ってしまうことによって様々な症状を引き起こしてしまう可能性があります。その症状のひとつが糖尿病性ケトアシドーシスです。糖尿病性ケトアシドーシスとは、何らかの原因によって糖の代謝機能が弱まり、通常よりもひどい高血糖状態になってしまう状態のことです。この糖尿病性ケトアシドーシスは代謝失調状態のことですが、高血糖なだけではなく著しいケトン体の蓄積も生じます。意識障害や、ひどい場合には脳浮腫や昏睡を引き起こし、最悪の場合には死に至ることもある恐ろしい病気なのです。

糖尿病性ケトアシドーシスの原因について

食べ物を摂取したとき、血糖値が上昇します。何を食べるのかによって上昇の仕方は様々ですが、この血糖値が上がることによってインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を下げようとします。しかしこのインスリンが極度に不足することによって、コルチゾールやアドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンの分泌が増え、インスリンの働きが弱まると、必然的に血糖値が下がらなくなり高血糖状態になってしまうのです。

このように糖の代謝がうまく行われないと体はエネルギー不足となり、代わりにタンパク質や脂質を分解してエネルギーを確保しようとします。このときにケトン体という物質が産生されるのですが、ケトン体が増え、血液が酸性に傾くことで、糖尿病性ケトアシドーシスを発症すると考えられています。

糖尿病性ケトアシドーシスの代表的な症状

高血糖状態になると、腎臓は水分と一緒に糖を排出しようとするため、尿量が増え、体は脱水状態になります。この脱水状態によって血液量は減り、高血糖がさらに進むという悪循環に陥ってしまうようになります。

多尿だけでは自覚することが難しいのですが、それに加えて吐き気や嘔吐、めまいや倦怠感、眠気など様々な症状が見られます。風邪のような症状に似ているので軽視されてしまうこともありますが、その他にもクスマウル呼吸という異常に深い呼吸になり、その息にはアセトンという物質が含まれているためフルーツのようなニオイがします。そして症状がひどいと意識障害を引き起こしたり、昏睡状態になってしまう恐れもあります。

異変があればすぐに医療機関に連絡を

糖尿病性ケトアシドーシスは、意識障害や昏睡状態を招く危険性があるので、多尿や嘔吐などの症状が見られたら糖尿病性ケトアシドーシスを疑って速やかに病院に行くことが重要です。病院では早急に治療が行われ、インスリンやカリウムなどの投与、輸液や電解質の補給などが行われます。糖尿病性ケトアシドーシスは安静にしていれば症状が和らぐというようなものではないので、医師による適切な処置というのが必要不可欠なのです。速やかな対処をするためにも家族や周りの人に協力をしてもらうことも大切です。

おわりに:糖尿病性ケトアシドーシスを放置すると意識障害につながる恐れも

糖尿病性ケトアシドーシスの症状は大きく自覚しにくいものが多いですが、放置しておくと重篤な事態につながる恐れがあります。吐き気や異様な眠気などに気づいたら、すぐに病院へ連絡し、指示を仰いでください。

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