記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/15
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
口が開けにくくなったり、顎の痛みを引き起こしたりする「顎関節症」。この顎関節症の治療ではマウスピースが用いられることが多いですが、中にはマウスピースでは治癒しない患者さんも。では、なぜマウスピースで治る人・治らない人がいるのでしょうか?
顎関節症とは、顎が痛い、口が開けにくい、顎を動かすと音が鳴るという3つの症状のうち、1つ以上に当てはまる状態のことを言います。いきなり口が開かなくなるのではなく、少しずつ症状が悪化していくので、自分では気づきにくいこともあります。指3本分を縦にして口の中に入るかという確認をしてみると分かりやすいです。
顎の関節の音は、カクカクと表現されることが多いですが、開け閉めすると音がなります。少しくらいなら口を開けられるけれども、大きく開けると痛みが出るというのも顎関節症の症状です。スルメなどの固い食べ物を噛むと、顎の関節に痛みが出るという人もいます。
顎関節症の治療ではマウスピースがよく使われますが、それには理由があります。そもそも顎関節症とは、上あごの骨と下あごの骨の間にある関節円板と呼ばれるクッションがずれることにより顎を動かすときに痛みが生じます。そのため、歯ぎしりや食いしばりで極端な力がかかってしまうと、関節に痛みが生じます。そこでマウスピースをすると、関節の負担を和らげることができます。またマウスピースは手軽に作ることができ、調整が簡単というのもメリットのひとつです。
顎関節症のためのマウスピースをしたのに、症状が治らないという人がいます。比較的軽度な場合であれば、マウスピースで症状は改善するのですが、重症化してしまうとなかなか治るまでに時間がかかります。
その理由は、顎の関節や噛み合わせのずれを引き起こす根本的な原因にアプローチしていないからです。マウスピースで改善できるのは、あくまで顎の関節を安定的な位置にすることだけです。つまり顎関節症という症状は同じでも、患者さんによって原因は様々なので、原因に合った治療をしなければいけません。
マウスピースをしても症状が良くならないときには、顎以外に原因がある可能性が高いです。原因は人により異なりますが、首の骨のずれや、頭蓋骨の歪み、内臓や骨盤の疲労など多岐にわたります。正しい原因を知ることで、患者さんに合わせた治療が可能になるので、なかなか治らない顎関節症に悩んでいる場合は、専門医を受診するなどして、自分がなぜ顎関節症になっているのかという原因を探りましょう。
軽度の顎関節症であればマウスピースのみの治療で改善することがありますが、重症化している場合は、根本的な原因にアプローチしなければなかなか改善しません。そのため、口腔外科や歯科などを受診し、原因の特定をすることがまずは大切です。