記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/22 記事改定日: 2018/5/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
髪の毛の一部が円形に抜け落ちてしまう「円形脱毛症」。症状から苦痛を感じる患者さんも多いですが、この円形脱毛症の治療に有効な薬にはどんな種類があるのでしょうか。病院治療で使われる薬剤の効果や副作用、セルフケアについて説明します。
円形脱毛症は「10円ハゲ」とも呼ばれているように、コインサイズの脱毛斑が突如としてできることからスタートします。これが一つだけの場合は「単発型」、複数できた場合は「多発型」と呼ばれます。多くの場合、単発型は1年以内、多発型は2年以内で改善する傾向にあり、特に単発型の60%程度は自然治癒をしています。
これに対して、蛇が通った後のように髪の毛が抜ける「蛇行型」や、脱毛斑が頭部全体に及んでしまう「全頭型」、髪の毛だけではなく眉毛やまつ毛などの体毛にまで及ぶ「汎発型」もあります。これらは難治性円形脱毛症に分類されており、生涯にわたり付き合わなくてはならない場合もあります。
円形脱毛症の治療でよく実施されるものには、「局所免疫療法」「ステロイド局所注射」「薬物療法」などがあります。
薬を使用して頭皮にかぶれを起こし、発毛を促す治療方法です。広範囲に円形脱毛症を発症している患者さんに実施されることが多いです。
局所免疫療法では、スクアリックアシッドジプチルエステルやジフェニルサイクロプロぺノンを始めとした、皮膚にかぶれを起こす薬剤が使用されます。
これらの薬剤を繰り返し患部に塗ることで、リンパ球の働きを正常化し、円形脱毛症を改善する効果が期待できるのです。
局所免疫療法は日本では認可が下りておらず、自費での治療となりますが、広い範囲で脱毛があるタイプの人でも行うことができます。ただし、効果が現れるまでに平均5か月ほどの期間が必要で、再発率は八割以上と高いのがデメリットでもあります。
また、特殊な薬剤を使用するため、必要のない部位にまでかぶれを生じることや、患部に耐えがたいかゆみや痛みを生じる副作用がでることもあります。
ステロイド局所注射は、その名の通り患部にステロイド薬を直接注射する治療方法です。ステロイドは広く炎症を抑える効果があり、毛根に作用しているリンパ球の働きを抑えることで症状改善効果を期待するものです。発毛効果は高いですが、ステロイドの副作用を考慮し、子供の患者には行わないのが原則です。主に単発型や多発型の成人患者に行われます。
しかし、ステロイド薬は体の免疫力が下がったり、太りやすくなるなどの副作用が起こりやすいのが弱点です。また、骨がもろくなって骨折しやすくなることもあり、使用期間には注意が必要です。
発毛効果のあるミノキシジルなどの外用薬や、抗アレルギー薬によって治療を行います。
円形脱毛症で広く使用される薬として有名なのはミノキシジルなどの塗り薬や抗アレルギー薬の内服薬です。
ミノキシジルには血管を拡張する作用があり、毛根への血流を増やす効果が期待されています。しかし、ミノキシジルには血管を拡張することで血圧が低下し、めまいや頭痛などの症状が生じたり、頭髪以外の体毛が増えてしまうと言った副作用もあります。また、ミノキシジルを塗ることで、治療開始直後は一時的に脱毛症状がひどくなることもありますので注意が必要です。
このほか、アレルギー症状を緩和させる抗アレルギー薬の内服治療が行われることもあります。これは、広範囲に脱毛がある患者にも使用することができます。一般的に用いられる抗アレルギー薬はセファラチンやグリチルリチン、ステロイドなどであり、胃腸障害や血圧上昇、眠気などの副作用が見られることもありますが、他の治療法よりも副作用は軽度なことが多いとされています。
円形脱毛症の改善に効果があるとされるセルフケアは以下になります。
円形脱毛症に有効であると謳われる市販薬やサプリメントは多々ありますが、これらの市販の治療薬は医師から処方される薬に比べて有効成分の含有量が少なく、効果が科学的に立証できていないもののあります。また、単発型の円形脱毛症には効果は見られないものが多いです。
このため、単なる薄毛でなく円形脱毛症が疑われるような脱毛・薄毛がある場合には必ず専門の医療機関を受診してご自身に合った治療を受けるようにしましょう。
円形脱毛症は、炎症によって毛髪を作る毛根が破壊され、文字通り円形の脱毛斑ができるのが特徴です。生え際から頭頂部にかけて髪の毛が抜けてしまうAGA(男性型脱毛症)とは異なり、発症年齢や性別、脱毛部の範囲に顕著な偏りは見られません。
プロペシア®の有効成分であるフィナステリドは、AGA型脱毛症の原因であるジヒドロテストステロン(DHT)の産生に関わる2型5αリダクターゼ還元酵素を阻害する作用によってAGA型の薄毛を改善に導きます。
そのため、プロペシア®ではAGAと原因が全く異なる円形脱毛症を治すことはできないでしょう。
円形脱毛症は古くはストレス由来の疾患と言われていたのですが、現在では直接的な原因は「自己免疫応答」という考え方が主流です。本来であれば身体を防御しているCD8陽性Tリンパ球が何らかの理由で誤作動を起こし、毛根部分の自己抗原を攻撃してしまうことで髪の毛が抜けると考えられています。
円形脱毛症のタイプによっては自然治癒が見込めますが、もしなかなか改善しない場合は、ご紹介したセルフケアを実施してみてください。それでもよくならなければ、専門外来での治療を検討しましょう。