記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/28 記事改定日: 2019/3/13
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
特に中高年の男性は発症しやすい傾向にある「鼠径ヘルニア」。脱腸とも呼ばれますが、この鼠径ヘルニアは再発しやすい疾患としても知られています。では、なぜ再発しやすいのでしょうか?理由を解説していきます。
鼠径ヘルニアとは、足の付け根から鼠径部(太ももの付け根あたり)にかけての筋膜が破れ、脱腸を起こしてしまう疾病です。外科の疾病では盲腸の次に発症しやすい病気でもあり、子供だけではなく特に加齢によって筋膜が緩む40歳以上の大人にも多く見られます。
女性よりも男性がかかりやすい病気であり、立ち仕事をしている人や肉体労働をしている人がなりやすいといわれています。そのほか喫煙者や便秘がちであったり肥満気味の人も要注意です。
鼠径ヘルニアは手術で治療できますが、再発率が高い病気です。
ただ、従来の筋膜を縫い合わせる方法では約10%の確率で再発していましたが、クーゲル法というメッシュを使用する手術の再発率は1%以下という結果が出ていることからもわかるように、以前に比べて再発しにくくなっているといわれています。
なお、再発した場合の症状は以前と同様に痛みが出てきたり、同じ場所が膨らんできます。鼠径ヘルニアは自然に治ることがないので手術をする必要がありますし、放っておくと飛び出したヘルニアが戻らず血流が止まることもあるので、再発に気づいたらすぐに医師に診てもらうことが大切です。
鼠径ヘルニアが再発する原因は、手術の方法によります。メッシュを使用したクーゲル法で手術を行ったとしてもメッシュがずれてしまったり、補強が十分ではない場合は再発してしまいますし、手術をしたけれど継続して肉体労働や力仕事をしていたことで再発することもよくあります。
仕事を変えるというのも大変なものですが、脱腸になりやすい体質であればその選択肢も視野に入れることを覚えておきましょう。
鼠径ヘルニアが再発した場合は自然に治ることはないですし、日常生活を送る上でも支障をきたすことになります。また再手術は初回の手術よりも難しくなってしまうので、信頼のおける病院や医師に相談することが大切です。
鼠径ヘルニアは、手術後に反対側の鼠径ヘルニアを発症することがあります。
鼠径ヘルニアの発症原因は、先天的な鼡径管の異常を除いて、筋肉や筋膜の脆弱化によるもの、肥満などによる筋肉や筋膜への過度な負担によるものがほとんどです。
このため手術によって鼠径ヘルニアを治したとしても、今度は反対側の鼡径管付近の筋肉や筋膜に過度な負担がかかってそちら側が発症してしまうことがあるのです。
しかし、反対側にも発症する可能性は高くはありませんので、予防的な手術などを行う必要はないと考えられています。
鼠径ヘルニアの再発時の症状は、以前と同様に指で押せば戻るような膨らみがあったり、膨らみはなくても痛みだけ感じるという場合もあります。
鼠径ヘルニアが進行すると吐き気を伴ったり強い痛みを感じるようになるので、違和感を感じたらすぐに外科の医師の診察を受けるように心掛けることが大切ですが、同じ部分を切開する場合は神経や血管を傷つける可能性も高く、高度な技術を要する手術になるので、慎重に医院や医師を選ぶことが大切です。
また鼠径ヘルニアの再発を予防するためには、生活習慣を改めることが大切です。腹圧がかかることによって刺激を与えてしまいますし、太りすぎや便秘症も腹圧が高くなる原因なので普段から生活習慣を改めるようにしましょう。
力仕事をされている方は、鼠径ヘルニアの再発リスクが高い傾向にあります。再手術の際はより高度な治療が必要になるので、できれば再発しないよう、仕事内容を変えたり、生活習慣を改善したりといった予防に努めることが大切です。