記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/28 記事改定日: 2018/7/18
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
肥満症とは、重度の肥満状態や内臓脂肪が非常に多い状態のことをいいます。肥満症の状態が長く続くと深刻な病気に発展する可能性があるので注意が必要です。肥満症のことについて詳しく解説していくので、体重やウエスト周りが気になる人は参考にしてください。
肥満症と肥満は異なります。
肥満は、体脂肪が標準よりも多く、太っている状態のことをいいます。
BMI〔体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕
の数値で25以上が目安です。肥満は体型の問題であって病気とまではいえません。日本人の30代~60代男性のうち、3人に1人が肥満だといわれています。
一方で肥満症は、肥満の中でもさらに太っている、あるいは内臓脂肪が特に目立って多いため、健康障害のリスクを抱えた病的状態をいいます。
肥満症は、おもに「高度肥満」と「内臓脂肪型肥満」に分類されます。
高度肥満はBMIで35以上に達する状態で、さらに肥満関連疾患を伴う場合をいいます。つまり、BMIが35以上あっても肥満関連疾患がなければ、肥満症ではなく肥満の状態です。
肥満関連疾患の例は、次の通りです。
内臓脂肪型肥満は、まず立った状態でのウエストの周囲の長さが、男性で85cm以上、女性で90cm以上であれば、内臓脂肪型肥満の疑いがあるとされます(いわゆる「メタボリック・シンドローム」)。
精密検査は、腹部CTスキャンを使って実施されます。へそがある位置で腹を「輪切り」にしたとき、腹腔内の内臓脂肪の断面積が100平方センチメートル以上あるとき、内臓脂肪型肥満と診断されます。
内臓脂肪は、何日も獲物を捕まえられずにいる飢餓状態でも生き残るため、生物にとってのエネルギー貯蔵装置として発達してきましたが、内臓脂肪を溜め込みすぎた状態が続くと生活習慣病のリスクが高まります。一見すると肥満に見えない体型の人が、内臓脂肪型肥満にかかっている場合も少なくないため注意しましょう。
高度肥満は、疾患を伴う肥満症ですから、治療が必要となります。
普段の生活習慣を改善し、食事療法によって摂取カロリーを下げ、運動療法によって消費カロリーを上げることで、体脂肪を減らすよう促します。
また、食欲抑制剤を処方するなど、薬で治療する薬物療法のほか、摂取カロリーを下げる目的で、胃の容量を小さくする外科手術が行われる場合もあります。
肥満症によって引き起こされやすいのは、心臓や血管など循環器系の健康リスクです。肥満症が続くことで、脂質異常症(高脂血症)で血管の壁が分厚くなり、しなやかさが無くなる動脈硬化が引き起こされやすく、心筋梗塞、脳梗塞、狭心症など、命に関わる重大な疾患にかかるおそれがあります。
また、日本肥満学会「肥満症の診断基準」によれば、胆道がん、大腸がん、乳がん、子宮内膜がんは、肥満症の人が特に罹患するリスクが高いがんだとしています。
肥満症は心筋梗塞や脳梗塞、脳内出血などのように生命の危機に及ぶような重篤な合併症を引き起こすことがあるため、適切な治療を行わなければなりません。
肥満症の治療には段階があり、まずは食事療法や運動療法などによって減量を目指します。運動は高度な肥満者では膝や足関節を痛める危険があるため、水中でのウォーキングやサイクリングなど負担の少ない物から始めます。食事療法は管理栄養士指導の下に減量を目指した低カロリー・低脂肪のメニューが勧められますが、自力で行うのが困難な場合には、入院して指導を受けることもできます。
食事療法や運動療法で効果がない場合には、サノレックスをはじめとした食欲抑制剤の内服や、胃を縮小する手術が考慮されることもあります。
また、糖尿病や高脂血症などの合併症では服薬治療を主体として定期的な検査が行われます。
肥満症の原因として、精神的な病気が関わっていると考えられる場合には、精神科や心療内科でのカウンセリングや認知行動療法などが併用されることも少なくありません。
肥満症は、「高度肥満」と「内臓脂肪型肥満」があり、いずれも医学的な治療が必要な肥満です。高度肥満は見た目にもわかりますが、内臓脂肪型肥満は、いかにも肥満という印象に見えない体型の人にもみられる「隠れ肥満症」ですので、自覚しにくく注意が必要です。定期健診や人間ドッグなどを利用して、自身の肥満状態を把握するようにしましょう。