口蓋裂の手術後に向き合う必要がある後遺症について

2017/12/14

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

口蓋裂(こうがいれつ)とは、妊娠初期の何らかの異常が起こり口蓋に裂け目が残ってしまうことです。言語獲得に問題がおきやすく、中耳炎や誤嚥性肺炎になりやすいなどの特徴もあります。この記事では、口蓋裂の手術と後遺症について解説しています。

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口蓋裂とは?

胎児の顔は左右から伸びるいくつかの突起がくっついて作られますが、くっつかない部分が残るとそこに裂け目ができてしまいます。「口蓋裂(こうがいれつ)」は、胎児期(妊娠初期)になんらかの異常が起き、先天的に口蓋(口の中の天井部分)に裂け目が残ってしまったものです。患者の半数はくちびるに「口唇裂(こうしんれつ)」もあり、歯茎の骨の「顎裂(がくれつ)」がある場合もあります。

日本人の約500人に1人発生しますが、原因は遺伝や環境、母親の状態などが複雑に関係しているといわれ、ひとりひとりの原因をはっきり特定することはできません。

口蓋裂では、食事や言葉が鼻から漏れてしまい、「誤嚥性肺炎」や言語に障害がでるほか、中耳炎になりやすく、顔面の中央の発育が遅れるといった問題も生じます。治療せずに言葉を覚えていくと悪い癖がついてしまい矯正が難しいため、1歳台に手術をすることが一般的です。

口蓋裂治療の最終的な目標は?

口蓋裂の治療は、成長に合わせ長期、多岐にわたって行われ、治療を終えてからも定期的なメンテナンスが必要となります。治療方法は治療が行われる病院や医師、症状によって異なります。

出生前の情報提供から始まり、出生直後に哺乳の指導、口蓋の裂け目をふさぐ「口蓋床」という成長に合わせての調整が必要な装置で矯正を開始し、3~6カ月で口唇外鼻形成術を行い、1歳頃から言語聴覚士によるフォローを開始し、1歳台で成長状態や発達状況に応じ口蓋形成術と中耳炎の治療を行います。
5歳以降に歯科矯正治療を開始し、言語聴覚士による定期指導を続けます。

治療の目的は正常な言語の獲得と食事に重点が置かれますが、歯並びや顔面形態への影響も多くみられることから、これらを同時に改善できるよう多くの専門スタッフからなるチーム医療で治療が行われます。

手術後に発症することの多い後遺症について

手術後の後遺症として多くみられるのが言語障害、歯並びの悪さや歯茎の裂け目です。
口蓋裂に特徴的な言語障害は、ふがふがと聞こえる「開鼻声」と聞き取りにくい「構音障害」です。裂け目が完全にふさがっていないことが原因であれば二次手術を行い、そうでなければ言語訓練のリハビリテーションで改善します。

歯並びに影響が出ると学童期以降に簡単な矯正装置で治療が開始され、上あごを前に引っぱるなど矯正が行われます。また顎裂に骨の欠けがある場合は、ある程度顎骨の発育が進んだ8~10歳頃に骨の移植手術をほどこし、その後永久歯が生えるのを待って11~12歳頃から本格的な歯科矯正治療を開始します。
また、就学前と思春期の成長終了を目安に、必要に応じ口唇外鼻の修正術や咽頭弁形成術なども行い、上下のあごのバランスが悪ければ成長後に手術で整えることになります。

おわりに:口蓋裂は時間がかかりますが治る病気。専門の医療チームとの協力が鍵

口蓋裂では、出生前から成人するまで長期、多岐にわたって治療が必要となります。しかし、最近では手術や治療法がかなり進歩しているうえにチーム医療も始まりつつあり、見た目にもきれいで発声の後遺症もなくなってきています。わからないことは積極的に相談し、子供の未来のために根気強く治していきましょう。

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