肝癌(肝細胞がん)の治療法と再発の可能性について

2017/12/27

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

発見が遅れやすい癌のひとつとして知られる「肝癌(肝細胞がん)」。この肝癌(肝細胞がん)に対しては、現在どういった治療が行われるのでしょうか?また、治療後の再発のリスクはあるのでしょうか。

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肝癌(肝細胞がん)の特徴

肝癌は肝臓にできる悪性腫瘍のことですが、肝細胞にできる肝細胞がんと胆管にできる胆管細胞がんの2種類があります。この中の大半が肝細胞がんのため、通常は肝癌というと肝細胞がんのことを指します。

肝癌は、肝炎ウイルスに感染して慢性的に肝機能が悪くなっている状態から発症することが多いのが特徴で、この点が他の癌とは大きく違うところです。日本では他の国よりもC型肝炎ウイルスに感染している人が多いため、肝癌を発症する人も多いという傾向があります。男女比は男性の方が3倍ほど発症率が高く、60代前半で発症する人が多いようです。日本では年間約3万人が肝癌で死亡しています。

どんな治療法があるの?

肝癌の治療は、肝切除術という癌細胞を取り除く手術療法が中心です。しかし、肝臓の病気は症状があらわれにくいことが特徴で、肝癌でも症状が出てきている時にはかなり癌が進行していることが多いです。また肝癌は複数の悪性腫瘍が同時にできることがあるため、いくつもの癌細胞がある場合には全てを取り除くことが困難になります。

そういった場合には手術ではなく化学療法や局所療法、動脈塞栓術などが行われます。局所療法というのは肝臓に針で薬剤を直接注入するPEIという方法や、ラジオ波焼灼療法といった方法があります。化学療法では分子標的薬というものが肝癌の治療に効果的とされています。

治療法はどうやって決めるの?

肝癌の治療では、癌の進行の度合いと共に、肝臓の機能がどこまで残っているかで治療方針を決定します。癌の進行が初期のステージⅠの場合には手術療法が選択されます。少し病状が進んでステージⅢになると手術と化学療法、ステージⅣなら化学療法のみにするといった具合です。

しかしここで問題になってくるのが肝臓の機能です。癌の進行は初期であっても、肝臓の機能が悪くなり過ぎていれば手術に耐えることができません。肝癌の場合はもともと慢性的な肝機能障害がある人が多いので、手術に耐えられなかったり、手術後の肝臓の機能を保つことが難しいことがあります。そういったことも考慮して癌の進行の度合いと肝臓の機能を合わせて治療方針を決定します。

治療後には再発の可能性がある?!

肝癌(肝細胞がん)が他の癌と大きく違うところは、健康な肝臓に癌ができるというのではなく、癌になる前に肝炎ウイルスに感染して肝臓の機能が低下している状態が続いてから発症する癌だということです。そのため手術で癌細胞を取り除いても、残った肝臓はすでに状態が悪いため、そこから新しい癌が再発してしまうことがあります。

もし再発した場合には、切除が行える状態であれば手術の適応となりますし、そうでなければ動注化学療法とインターフェロン製剤の併用療法、ラジオ波焼灼術、エタノール注入法、肝動脈塞栓術などが選択肢としてあげられます。また生体肝移植という治療方法も残っています。肝癌は再発しやすい癌なので治療が終了した後も定期的に検診を受けることが重要です。

おわりに:肝臓の状態によっては手術以外の治療法になることも

肝癌には基本的に手術治療が行われますが、肝臓の状態によっては、他の治療法が選択される場合もあります。どれが適切な治療法かについてはかなり個人差があるので、主治医とよく相談の上、自分に合った治療を進めていきましょう。

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