記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/30
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
虫歯などで歯を削った際、上に被せる「差し歯」。この差し歯治療を行ったことのある方はたくさんいらっしゃるかと思いますが、差し歯の毎日のケアはどうするのがいいのでしょうか?また、もし差し歯がとれてしまったときはどうすればいいのでしょうか?
差し歯とは歯の被せ物のことであり、クラウンとも呼ばれています。例えば虫歯などで歯冠が無くなった場合でも歯根に関しては残存していますが、そのままでは歯として機能しないため、人工的な歯を作っていくのです。
差し歯治療の流れとしては、まず基礎を作るために人工的な土台を入れていきます。次に入れた土台に被せ物を装着し、強力なセメントを中に入れてしっかりと接着させます。基本の治療内容はこのようになっていますが、内容に関しては選択することも可能です。
広く行われているのが保険適用の治療ですが、この場合はコストの安い金属やプラスチックなどを用いて差し歯を成形します。一方で保険適用外の治療もあり、その場合は強度の高いファイバー繊維の土台やセラミックなどの被せ物を用います。保険適用外の場合は費用は掛かるものの、見た目が良くなるのがメリットです。
差し歯の毎日のお手入れの基本はブラッシングですが、その際には丁寧な磨き方を心掛けることが大切です。ポイントは力を入れすぎないことです。ブラッシングをする際には力を入れてしまいがちですが、歯垢は力を入れずとも落とすことができます。特にセラミックの差し歯を入れている場合、天然の歯よりも汚れにくいですから、軽く磨くだけでも十分です。逆に強く擦ると歯茎を削ってしまうこととなり、歯周病のリスクも高まってしまいます。
丁寧且つ優しく磨くためには、まず鉛筆を持つように軽く歯ブラシを持ちましょう。磨く時には大きくヘッドを動かさず、細かく小さくピンポイントで磨いていきます。特に歯と歯茎の境目は歯垢が残りやすいですから鏡を見ながら丁寧に行うことが大切です。
差し歯を長持ちさせるには、定期健診を受けるのが鉄則です。定期的に状態をチェックすることで、正しいメンテナンスができているかを知ると共に、新たな虫歯などの早期発見ができます。定期健診は差し歯を入れていない歯の健康維持にもつながるため、全体の健康維持のためにも歯科医によるチェックが有効です。自宅できちんと磨いているつもりでも足りない部分があるケースも少なくありませんから注意しましょう。
もし汚れがある場合は、クリーニングを施してキレイにします。特にセラミックは白さが魅力の差し歯でもありますから、口元の美しさを保つという意味でも汚れは小まめに取り除いた方が良いでしょう。いくら汚れにくい素材とは言え日々のケアや体質によって汚れやすくなりますから油断はできません。
万一、差し歯が取れてしまった時の対処法ですが、その際にやってはいけないのが接着剤で付けてしまうことです。歯医者に行く暇がない、治療費を抑えたいなどの理由でやってしまう方もいますが、自分で対処をすると差し歯が使えなくなる恐れがあるのです。ダメにしてしまうと新たに治療を行うことになるため、却って高くついてしまいます。
差し歯が取れた場合は、自分で対処はせず素直に歯科に行くのが鉄則です。軽症ならば再度接着することが可能ですので簡単に元通りにできます。なお、できるだけ早めに歯科に行くことを心掛けた方が良いでしょう。審美的な問題はもちろんのこと、差し歯で守られていないことで虫歯が急速に進行することもあるのです。
普通の歯と同じように、毎日の丁寧なブラッシングと定期的な歯科健診が、差し歯の維持のためには欠かせません。少しでも長く差し歯と付き合えるよう、日頃のケアを大切にしていきましょう。