子宮脱の治療法と治療後に起こる可能性のある合併症について

2017/12/27

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

筋力低下などに伴い子宮の位置が下がってしまい、腟から飛び出てしまう「子宮脱」。今回の記事では、この子宮脱に行われる治療法と、治療で起こる可能性のある合併症を解説していきます。

子宮脱はどんな病気?

子宮脱とは、子宮を支えている靭帯や筋肉がゆるみ、子宮が下がってしまう状態のことを言います。腟内まで下りてくるだけでなく、腟からも出てしまう状態が子宮脱です。

支える組織や筋肉が弛緩してしまうことで起こるのですが、女性の場合は出産の際に筋肉や靭帯が伸びたり損傷してしまうことがよくあります。比較的高齢な女性に多く見られる症状ですが、力仕事をされている場合などでは40代で起こることも珍しくありません。

初期であれば、おなかの下に何かが下がってくる感覚がありますが、だんだんと症状が進んでくると、股の間に挟まっているような感覚や、ピンポン玉のようなものが出ているという状態になり、自覚症状が分かりやすいという特徴があります。

子宮脱の代表的な治療法について

子宮脱の代表的な治療法は、ペッサリー療法と呼ばれるものです。ペッサリーと呼ばれるリングを腟の中に入れることで、子宮がリングに引っかかり、それ以上落ちてこないようにする治療法です。入院せずに外来で行うことができ、比較的初期に行われる治療法ですが、リングが炎症を起こすことがあるので定期検診が必要になります。

なお、症状が進んでいる場合には、下がってきた子宮を摘出したり、伸びてしまった腟を切除して縫い縮めるという手術を行うこともあります。手術時間は1時間半から2時間ほどで、10日ほどの入院が必要になります。子宮摘出後に腟が下がってきてしまう場合には、腟を縫い縮めたり、腟を靭帯に固定するといった治療も行われます。

新たな治療法:TVM手術とは?

子宮脱の新たな治療法として、TVM手術が日本では2005年から行われるようになりました。TVM手術は、腟を切開して、裏側に特殊なメッシュを埋め込む治療法です。メッシュが子宮などの臓器を支えてくれるので、下がりにくくなります。従来の治療法よりも再発率が低く、身体への負担が少ないために、入院も7日程度で終えることができます。再発率は5~10%ほどで、この数字は従来の治療の半分以下になっています。何度も治療を繰り返す必要がないので、患者さんの身体的な負担はもちろん、精神的な負担も軽減することができます。腟を縫い縮めることがないので、性生活に支障が出ることもありません。腟の大きさに変化はなく、違和感もありません。

手術後に発症する可能性がある合併症

子宮脱のTVM治療は再発率が低いというメリットのある治療ですが、手術後に合併症が出ることがあります。合併症が発症する頻度は5%以下ととても低い数字なので、それほど気にする必要はないと言われています。

可能性がある合併症としては、術後しばらく自分1人での排尿が難しくなることがあります。2週間ほどで自然に回復することがほとんどですが、続くようですと泌尿器科への受診が必要になります。

また、尿漏れを起こすこともあります。これは治療により膀胱が本来の位置に戻ることで起きる副作用で、症状が強い場合は失禁のための治療を泌尿器科で受ける必要があります。

おわりに:各治療法のメリットやリスクをふまえ、自分に合った治療を選択しよう

ペッサリー療法やTVM手術など、子宮脱に有効とされる治療法にはさまざまなものがあります。それぞれの治療でメリットやリスクは異なりますので、詳しくは専門医と相談の上、自分に合った治療を選択していきましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

手術(137) 合併症(64) 失禁(7) 排尿障害(19) 子宮脱(4) ペッサリー(2) TVM手術(1)