記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/28 記事改定日: 2020/8/28
記事改定回数:3回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
皮膚にできる良性腫瘍「脂肪腫」は、主に手術で治療が行われます。脂肪腫の手術に必要な検査や、当日の手術所要時間、手術費用、術後の経過などについて詳しく解説していきます。
脂肪腫はリポーマとも呼ばれている腫瘍で、ほとんどが良性のものです。良性なのでそのままにしておくという人もいますが、放置しておくとどんどん大きくなっていくことが多いため、一般的には治療を施します。
治療方法としては手術での切除が一般的ですが、その前に本当に脂肪腫かどうかを確認する必要があるので、MRIなどで精密な検査が必要です。
脂肪腫であるということが分かれば、緊急手術をすることはなく、事前に日にちを決めてその日に手術を行います。
ただ、病院によってはMRIの検査の予約が数週間ほど先になることもあるので、手術で脂肪腫を取り除き病理検査に回したあとに、良性か悪性か検査をすることがあります。
脂肪腫はほとんどが良性のため基本的に治療の必要はありませんが、次のような症状があるときは手術による切除を行うことがあります。
脂肪腫の手術は、麻酔、切開、縫合の順番で行われるのが一般的で、術後は抜糸をします。以下で詳しい手術内容を説明していきます。
まず麻酔をし、その後、脂肪腫のある場所を皮膚の上からマーキングをして切開していきます。
切開した部分からピンセットを使い腫瘍を取り出しますが、このとき腫瘍だけでなく腫瘍の周りの組織も一緒に取り除いていきます。これは、細胞が残っていると再発の危険性があるためです。
腫瘍が取り除ければ、切開した部分を縫合して手術は終わりになります。
ただし腫瘍が大きい場合は、体の中に空洞ができてしまい、そこに血液がたまることがあるため、ドレーンと呼ばれる器具を挿入することもあります。
縫った部分は抜糸を行い、1週間ほどで傷口もきれいになっていきます。縫合した部分を伸縮テープで覆うこともあります。
脂肪腫の手術の時間は、麻酔から縫合までを含めて1~2時間ほどですが、実際に手術をする時間は10~20分程度です。
腫瘍が大きければその分時間も長くかかるので一概には言えませんが、3時間ほどかかる場合もあります。手術は日帰りで行える場合もありますが、大きいと入院することもあります。
手術後は安静にして、1週間ほど飲酒や運動は避けるようにしましょう。入浴は傷口の大きさにもよりますが、翌日からシャワー程度ならOKの場合が多いです。
縫合したところの抜糸は、7~10日後になります。抜糸をする頃には傷口もだいぶきれいになってきて、皮膚が再生するようになります。
脂肪腫の手術中は麻酔をしているので、痛みはほとんどありません。
術後は、麻酔が切れてから当日から翌日にかけて痛むことがありますが、痛み止めが処方されるのでそこまで心配する必要はないでしょう。傷口が1センチ以下の小さい場合は、術後の痛みを感じないこともあります。
多くの場合は、2日目以降から痛みがだんだんと和らいでいき、痛み止めを飲まなくても大丈夫なようになります。
痛みがなくなれば、痛み止めを飲まなくても構いませんが、術後の腫れのトラブルを避けるためにも、腫れ止めなどの薬は痛みがなくなっても継続的に飲むようにしましょう。
痛みが心配だという患者さんは多いですが、心配するほどではなかったという感想が多くみられます。
脂肪腫の切除は腫瘍を包む被膜を破らないように慎重に行われるため、完全に切除できれば再発することは非常に稀です。
しかし、元々の体質で脂肪腫ができやすい人は切除したとしても他部位に新たな脂肪腫ができたり、切除した場所に再発することもありますので、再手術が必要になることもあります。術後のフォローアップは担当医とよく相談して進めるようにしましょう。
脂肪腫は基本的に皮膚の下の浅い部位にあるため簡単に簡単に切除することができ、後遺症を残すことはほとんどありません。
しかし、脂肪腫が筋肉内に入り組んでいるような場合は、切除する際に筋肉内の血管を傷つけて出血することがあります。また、神経にダメージを与えて麻痺などが生じる可能性もまったくないとは言い切れません。
発症から手術まで長期間かかった場合は、脂肪腫がある部位の皮膚が引き延ばされていることも珍しくなく、手術後に切除部分がへこんで見えてしまうことがあります。
脂肪腫の手術の多くは健康保険が使えますので、自己負担は三割になります。しかし、脂肪腫は小さい物であれば治療をせずに経過観察を行うものもあり、美容を目的とした手術では健康保険が使えないこともあります。
手術の費用は、脂肪腫の大きさやできた場所によっても異なります。大きくなれば高額になります。できた部位が肘下やひざ下など、洋服を着ても隠すことができない「露出部」はより高額になるのが一般的です。
手術費用は医療機関によって異なり、日帰りで行うか入院が必要かによっても費用は大きく変わります。
このため、手術を受ける前に医療機関に費用を問い合わせることをおすすめします。
脂肪腫の手術は、腫瘍の大きさによって手術時間が異なります。術後の傷口や痛みについては、術後数日経てばほとんど問題なく改善していきます。手術に当たって不安なことがあれば、医師と相談するようにしましょう。