記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/26 記事改定日: 2018/6/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
学習障害は、「読む」「書く」「計算する」という能力の中の一部に問題が起こる発達障害です。他の能力に問題がないことが特徴のため、治療が遅れてうつ病や不安障害などを抱えてしまうことがあります。
この記事では、学習障害の診断基準と治療のタイミングについて解説しています。適切な時期にサポートしてあげられるように、きちんと理解しておきましょう。
学習障害が疑われる場合は、まず身近な専門機関の相談窓口に行くようにしましょう。子供の場合は、保険センターや子育て支援センター、児童発達支援事業所などに相談してみてください。
また、大人になるまで学習障害に気づかないこともあります。大人の学習障害に関しては、発達障がい者支援センター、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所などで相談をすることをおすすめします。
相談後、必要に応じて医療機関を紹介してもらうことができるので、紹介された場合は受診するようにしてください。
医療機関によってさまざまな診断方法がありますが、まずは問診で現在見られる症状や困っていること、養育歴、家族歴などの確認が行われます。その後、脳波検査、頭部のCT、MRI検査などで、てんかんや脳の病気がないかを確認し、さらに知能検査や認知能力検査などの心理検査を行い、これらの検査の結果をもとに学習障害かどうかの診断が行われます。
学習障害は適正な診断基準に合致するかを細かく調べることで診断が下されます。
現在多く用いられる診断基準はアメリカ精神医学会の提案による「DSM-5」ですが、具体的には、次の基準を満たしている必要があります。
これらの項目に全て合致する場合には学習障害の可能性がありますので、然るべき専門機関を受診して適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
学習障害の診断で、「知的能力に問題がない」ことを調べるために知能検査が行われます。今現在、多く用いられる検査にはWAISとWISCがあります。それぞれの違いは以下の通りです。
16~89歳に対して行われる知能テストであり、全検査IQ、言語性IQ、動作性IQと共に、言語理解、知覚統合、作動記憶、処理速度も評価することが可能です。これら4つの項目には14種類の検査があり、測定したい項目に合わせて検査を選択することが可能です。
5歳~16歳までの子供に対して行われる知能検査です。15種類の検査が行われ、全検査IQと言語理解、知覚推理、作動記憶、処理速度に関する評価を行うことができます。これら5つの点数の分布や偏りなどから、子供の知的能力のどこに問題があるのかを知ることができます。
発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っていて小さいころから症状が現れます。その中でも学習障害は全体的な知能発達には問題がありませんが、読む、書く、計算するなどのいずれか一部に困難がある状態の発達障害のことを指します。2~10%の有病率といわれており、男性の方が女性よりも「読むことの困難」を抱えるケースが数倍多いとされています。
学習障害は、手術や薬物などを使用した医学的な根治治療があるわけではありません。子供の将来を広げるための手助けになるような取り組みとして、教育や生活面においてより良い環境作りを徹底したり、療育の支援を行います。一人ひとり症状も違い、困難になる内容や困難の度合いも変わってきますので、それぞれに合わせたサポートが必要です。
学習障害は、気づいた段階ですぐにサポートを進めることが大切です。
学習障害にもいくつかタイプがあり、一人ひとりの症状や学習の得手不得手に違いがあります。その人の年齢や苦手分野などを踏まえながら、それぞれに適した支援を行うようにサポートしてあげましょう。
また、通常学級で勉強をしながら学習を補完することもあれば、特別支援学級などに通う方法をとることもあるなど、適した支援方法が異なるだけでなく、治療を終えるべきタイミングにも個人差があります。治療を終えるべきタイミングについては、専門家と相談しながら慎重に決定するようにしましょう。
学習障害を根本治療することはできません。そのため、日常生活や学校生活において、子供が困難を乗り越えられるようにサポートしてあげることが治療の目的になります。治療が遅れてしまうと深い悩みを抱えてしまうことになりかねません。疑わしい症状に気づいた段階ですぐに専門機関に相談するようにしましょう。