記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ヘモクロマトーシスは鉄代謝異常疾患であり、臓器などに過剰に鉄が溜まってしまうことで様々な合併症に発展する可能性があります。そのなかでも、心不全や肝硬変は代表的な合併症であり、発症すると命に関わるケースがあります。この記事では、ヘモクロマトーシスの治療について解説しています。心不全や肝硬変に発展させないためにも、きちんと理解しておきましょう。
ヘモクロマトーシスは体に欠かせない鉄が臓器などに過剰に沈着してしまう鉄代謝異常疾患です。進行すると心不全や不整脈、がん、肝硬変などの重篤な合併症に発展するおそれがあります。
ヘモクロマトーシスの原因は原発性(特発性)と続発性(二次性)に分けることができます。原発性は遺伝子異常に基づくもので、欧米ではヘモクロマトーシス発症の原因は多くが原発性だとされています。一方、日本では大量の輸血などが原因で輸血後鉄過剰症になることが原因でヘモクロマトーシスを発症することがほとんどであり、もともと鉄代謝に異常がないのに発症します。
鉄が沈着して体に何かしらの症状となって現れるまでには20〜40年ほどかかるとされるため、症状が現れる人は40~60代の人が多いです。
肝硬変や糖尿病、皮膚色素沈着、心不全の4つが主な合併症であり、肝硬変や心不全は死亡にも繋がる重篤な合併症です。さらにこれらの症状に加えて、甲状腺や副甲状腺、下垂体の機能低下などの内分泌障害もみられるようになり、性欲減退、体毛の脱落、無月経、睾丸萎縮など目に見える形で症状が現れます。また、関節が痛んだり、肝細胞がんを合併することもあるります。
ヘモクロマトーシスの治療は、主に2つあります。
ひとつは臓器に沈着している鉄を除去する方法、もうひとつはヘモクロマトーシスによって生じた臓器の障害から起こる症状を抑える方法です。
ヘモクロマトーシスの治療は、鉄の除去が中心になります。方法として瀉血(しゃけつ:血液を抜く治療方法)療法と、鉄キレート剤を投与で鉄の排出を促す方法があります。
瀉血のほうが治療費が安く済みで効果が高いといわれていますが、貧血気味の人や低タンパク血症の人には推奨できません。瀉血療法が受けられない人の場合は、鉄キレート剤の投与を行うことになります。
ヘモクロマトーシスは早期発見し正しい治療を行えば、予後は問題なく通常の生活を問題なく遅れるといわれています。また、鉄分を含む食事も普通に食べることが可能であり、食事も過度に制限されることはありません。ただし、アルコールを摂取すると鉄吸収量が上がり、肝硬変のリスクが高まることから、制限されることもあるようです。
ヘモクロマトーシスは発症して症状が現れたときには、すでに臓器が障害されている状態のため、完治させることは困難です。しかし、適切なタイミングで適切な治療を受けることができれば、心不全や肝硬変などの合併症を防ぐことができ、通常の生活を送ることが可能といわれています。医師の指示に従いながら、適切な治療を続けていくようにしましょう。