家族性高コレステロール血症(FH)の原因について

2018/4/27

一般的に悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールは、通常生活習慣が原因で増加します。しかし、家族性高コレステロール血症(FH)の人は、生活習慣と関係なくLDLコレステロールが増えてしまう場合があるのです。この記事では、家族性高コレステロール血症(FH)の原因について解説しています。

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家族性高コレステロール血症(FH)とは

コレステロールは通常、食事や運動などの生活習慣が原因でコレステロール値が上昇するものですが、家族性高コレステロール血症(FH)は、遺伝が原因になってLDLコレステロール値が高くなる遺伝性代謝疾患のひとつです。

LDLコレステロールはLDL受容体にくっついて肝臓や細胞に取り込まれ、血液中のLDLコレステロールを正常値内に保っています。FHの人はLDL受容体やLDL受容体に関係しているタンパクに遺伝的な異常や欠損があるため、LDLコレステロールが正常に細胞内に取り込まれなくなってしまい血液中のLDLコレステロールが増加してしまいます。

日本でのFH患者総数は25万人以上とされ、遺伝性代謝疾患のなかでも頻度が高いものといわれています。

発症の原因について

FHの原因と考えられるのはLDL受容体やタンパクの遺伝子異変ですが、具体的には主に3つあります。

①LDL受容体の遺伝子変異

これまで世界で1000種類異常もの遺伝子異変がFHの原因になると報告されています。日本でも100種類異常の変異が報告されています。さらに変異が合併することで冠動脈疾患を合併するなどの病態が生じることもわかっています。

②アポB-100の遺伝子変異

LDL受容体に対して特異的に結合する性質を持つ、アポB-100の遺伝子変異も、LDL受容体の遺伝子変異と同様にFHの原因になることがわかっています。欧米の白人ではこれが原因になっていることが多いですが、多民族ではこの頻度は低いとされており、日本でもまだ報告がありません。

③LDL受容体分解促進タンパク質:PCSK9

PCSK9はLDL受容体と結合することで変異します。この変異によってLDL受容体が減少してしまうことも原因と考えられています。これはPCSK9がLDL受容体と結びつきやすい性質をもっているためです。

どんな治療が有効とされるのか

FH患者の場合、LDLコレステロール値の管理は100mg/dL未満に設定されています。これは冠動脈疾患の発症リスクを抑えるためです。この目標はあくまで目安であり、FH患者はこの目標に到達しなくても治療を始める前のLDLコレステロール値の50%未満にすることを治療の目標に設定することもあります。

目標達成のためには、まずは生活習慣の改善が必要です。
喫煙者は、心血管疾患のリスクを低下させるために禁煙する必要があります。さらに、定期的に運動をすることも必要です1日30分以上、週180分を目安に歩くことが効果的と考えられています。また、スロージョギングや水泳などの有酸素運動もおすすめです。そして食事にも気をつける必要があります。コレステロールの多い食事は避けて肥満防止に努めましょう。

ただし15歳以上のFHヘテロ接合患者には薬物治療が必要です。LDLコレステロール値の反応と副作用などを確認しながら量を調整します。投与を中止するとLDLコレステロール値が元に戻ってしまうことがあるので、自己判断での休薬、中断は避けましょう。

おわりに:家族性高コレステロール血症は遺伝が原因。生活習慣の改善とともに、必要な場合は病院での治療も並行しよう

家族性高コレステロール血症の人は、遺伝的な原因によって生まれつきLDLコレステロールが増えやすい状態です。そのため、医師の指導のもと、LDLコレステロール値を厳しくコントロールする必要があります。ただし、場合によっては生活習慣の改善だけでコントロールできない場合もあります。必要に応じて病院の治療と並行しながら、しっかりと管理していきましょう。

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