記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インスリンの打ち忘れなどで起こることのある、糖尿病の急性合併症の一種である「糖尿病性ケトアシドーシス」。この糖尿病性ケトアシドーシスは、どのように治療していくのでしょうか?予防法と併せて解説していきます。
糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病による高血糖性の急性代謝失調です。
発症メカニズムについて説明すると、まず糖尿病になると、インスリンが欠乏して血液中のブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなり高血糖状態になります。すると糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーをつくり出すようになり、副産物として産生されたケトン体が血液中に増える高ケトン血症という状態に陥ります。これにより血液が酸性になるケトアシドーシスに陥り、意識障害などの異常が出てくるようになります。
糖尿病性ケトアシドーシスは1型糖尿病の患者に起こりやすいですが、2型糖尿病でもジュースなど清涼飲料水を多飲する人に見られ、ペットボトル症候群もしくは清涼飲料水アシドーシスとも呼ばれています。
比較的若い人が発症しやすく、高血糖の症状や悪心、嘔吐、腹痛などの消化器の症状が起こります。また、グルコースが尿の中に大量に排泄されて生じる浸透圧利尿によって体液や電解質が失われ、脱水状態を起こし、低血圧や頻脈になることもあります。ほかに、クスマウル呼吸と呼ばれる速く深い呼吸がみられたり、悪化によって脳浮腫や昏睡に陥ったりすることもあります。
糖尿病性ケトアシドーシスは、極度のインスリン不足によって起こります。インスリン療法を行っている1型糖尿病の人の場合は、シックデイと呼ばれる体調の悪い日にインスリン注射を行わなかった時などに発症することが多いと言われます。異常を感じたら、こまめに血糖値を測定して早めに病院へ行くことが重要になります。
糖尿病性ケトアシドーシスの治療では、入院の上、生理食塩水などを大量に補う点滴や電解質の補充、インスリンの投与が行われます。高血糖状態や脱水、血液が酸性に傾いている状態を速やかに改善させることが重要となりますが、インスリンを用いて治療することで低カリウム血症を起こすケースもあることと、血糖値を急速に下げると血液内の浸透圧が低下して水分や電解質、栄養分なども失われることから徐々に改善させることが重視されます。
糖尿病性ケトアシドーシスを発症させないためには、日ごろから適切な血糖コントロールと規則正しい生活を心掛けて予防しておくことが重要です。特に、食欲がなくて何も食べていないシックデイの日に、自己判断でインスリン注射を中止してしまうことが糖尿病性ケトアシドーシスの発症原因で多いと言われています。
糖尿病性ケトアシドーシスの治療では、インスリン注射を正しく行って血糖降下剤もきちんと使用することが大切です。インスリン注射をきちんと行っているからといって暴飲暴食しないよう注意し、血糖値を正常範囲に維持できるようこまめにチェックしましょう。定期的に適度な運動を行い、過度のストレスを溜め込まないことにも留意します。
また、糖尿病性ケトアシドーシスは風邪や下痢、発熱などシックデイに起こりやすくなることから、感染症にかからないように注意しておくことも重要となります。肺炎や尿路感染といった感染症が原因で、糖尿病ケトアシドーシスを起こすケースも少なくありません。
糖尿病性ケトアシドーシスは重症化すると意識障害につながる恐れがあるので、高血糖や吐き気などいつもと違う症状があらわれたら、すぐに病院を受診することが大切です。日頃から規則正しい生活とインスリン摂取を心がけ、未然に発症を予防しましょう。