記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/28 記事改定日: 2020/8/27
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性前立腺炎の原因は複数あり、それぞれが複雑に絡み合って発症するケースもあるようです。治療に漢方薬が使われることもありますが、漢方の選び方はどうするのがいいのでしょう。この記事では、慢性前立腺炎の原因や症状、治療薬について解説していきます。
前立腺炎は、大きく分けて慢性前立腺炎、急性前立腺炎、非細菌性慢性前立腺炎、無症候性炎症性前立腺炎の4つに分類することができます。
前立腺の炎症が慢性的に起こる症状であり、会陰部や下腹部、陰嚢(いんのう)部などに痛みや不快な症状を感じる病気です。
頻尿や、残尿感、尿閉、排尿痛などの排尿障害の症状が初期症状として現れやすく、日常生活に多少の影響をもたらす病気になっています。
非細菌性慢性前立腺炎として発症することが多く、細菌などの感染が起因しないことがほとんどです。
ブドウ球菌や、腸球菌、セラチア菌などが原因菌になることが多いといわれています。ただし、急性前立腺炎が慢性化して発症することもあるため、1度でも急性前立腺炎になったことがある人は、注意が必要です。
非細菌性の慢性前立腺炎は前立腺への物理的な刺激や、下腹部の蒸れなどが原因で引き起こされます。具体的には、長時間にわたるデスクワークや搭乗などによる座位、自転車やバイクなどによる長時間の振動刺激などが挙げられます。
また、ストレスや疲れの蓄積、過度な飲酒や睡眠不足などの生活習慣の乱れも発症するリスクを高めると考えられています。
無症候性炎症性前立腺炎とは、痛みや熱感などの自覚症状が全くないにも関わらず、尿や精液などを顕微鏡で詳しく調べると炎症があるときに生じる白血球の増加が見られる病気のことです。
どのようなメカニズムで発症するのか明確には分かっておらず、実際には多くの方が発症しているとの意見もあります。症状がないためたまたま受けた検査で発見されたとしても治療の必要はなく、将来的に前立腺の別の病気を引き起こすこともないとされています。
慢性前立腺炎は、主に内服薬によって治療が行われます。服用する期間は、一般的に4週間から6週間ほどとされますが、前立腺には抗生物質が届きにくい性質があるため、数ヶ月の期間を要するケースもあります。
治療で使用される抗生物質はニューキノロン剤が主流です。ただし、クラミジアによる慢性前立腺炎の治療には、マクロライド系の抗生物質が選択されることもあります。
その他、α1遮断薬や生活習慣の改善、前立腺マッサージなどで改善がみられることもあります。
慢性前立腺炎の治療に用いられる漢方薬には、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)や五淋散(ごりんさん)があります。
また、骨盤腔内のうっ血を和らげるために、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、温経湯(うんけいとう)などを使用して治療をすることもあります。
漢方薬は体への負担が少なく、副作用などのリスクも低いとされていますが、慢性前立腺炎に対しての十分な治験実績がありません。そのため、使用に関しては自身の体質などを医師や薬剤師に分析してもらいながら、自分に合った漢方薬を選択することが重要になっています。自己判断で選択することは絶対にしないでください。
慢性前立腺炎は感染が原因でないものが大半といわれていますが、細菌感染が原因のものがあり、細菌感染が原因の場合は抗生物質の使用が必須です。漢方薬で炎症症状の緩和がみられるケースもありますが、自己判断での使用はやめてください。必ず医師に許可をもらってから服用するようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。