記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/30 記事改定日: 2019/5/7
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
原因不明の微熱やだるさがずっと続いてしまう「慢性疲労症候群」。実はこの慢性疲労症候群は、肝臓の不調と関連しているのではないかといわれているのです。以降で詳しく解説していきます。
慢性疲労症候群とは、原因のわからない極度の疲労、身体を動かすことすら出来ないような疲労が長期間にわたって続き、日常生活を送ることすら困難になってしまう症例です。それまで健康だった人が風邪などにかかったことがきっかけとなり、いつまでも治らずに長引くことで発症し、身体を横たえて休んでいても回復せず、人によっては摂食障害や不眠などを伴う場合もあります。
病院で血液検査、内臓や脳の検査、神経系など全身を調べてみても異常がみつからない時に、慢性疲労症候群が疑われます。
主な症状は微熱です。平熱よりも1度ほど高いだけなので見逃されがちですが、これが半年以上持続します。解熱剤を使用しても下がることはなく、のどの痛みや頭痛を訴える患者もいます。そして体を起こすことも辛いほどの疲労感、激しい運動をしたわけでもないのに筋肉痛、不眠や過眠の睡眠障害、鬱に似た症状が出て気分が落ち込み、認知症のように物忘れが激しくなる人もいます。
慢性疲労症候群の原因ははっきり解明されていませんが、現在は仮説として、ストレスによる神経系、ホルモン系、免疫系のバランスの乱れが考えられています。
身体的、化学的、精神的、生物的、物理的な影響でストレスを感じると、神経系の働きに異常が生じて免疫力が低下し、体内に潜伏していたウイルスが再活性化されます。
すると体は再活性化したウイルスを抑え込むために免疫物質を過剰に作るようになり、それが原因で脳の働きに影響が及んで強い疲労感やその他の不快な症状を引き起こしているのではないか、というものです。
また、報告では慢性疲労症候群の患者には、ある特定の遺伝子に関する異常が認められているそうです。
疲れを感じている時には、肝臓が正常に働いていない可能性があります。「なんだか疲れた」「最近元気がない」という自覚がある人は、肝機能が低下しているかもしれません。なぜなら肝臓は身体を修復する器官であり、体内の毒素を分解してエネルギーを供給しているからです。肝臓は副交感神経がコントロールしていますが、その副交感神経はストレスを受けると肝臓の動きをコントロールしにくくなるのです。
先述の通り、慢性疲労症候群は、ストレスによる体調の変化と遺伝的要因などから免疫や神経、そして内分泌の異常が組み合わさって発症するのではないかと考えられています。人間は大きなストレスを受け続けていると、体内を正常に保つために大量の酵素を必要とします。この酵素が身体の修復をするのですが、酵素を作る器官が肝臓なので、肝機能の低下によって免疫系統や内分泌系統などに影響があると考えられます。よって、肝機能の低下は慢性疲労症候群にも関係しており、肝臓をケアすることが大切なのです。
慢性疲労症候群の治療は、薬物療法が主体となります。
主に使用される薬は、漢方薬の補中益気湯やビタミンCです。これらは免疫力を高めたり、抗酸化作用があるため、過度な疲労感を軽減する効果が期待できます。
また、免疫機能の回復を目指す目的で抗ウイルス薬や免疫調整剤が使用されることもあります。
しかし、これらの薬物治療の効果は個人差が非常に大きく、疲労の原因となるストレスや不眠などがある場合には抗うつ薬や睡眠薬、精神安定剤なども併用されることが多く、医師と相談しながら薬の調整を行っていく必要があります。
慢性疲労症候群の原因はいまのところはっきりわかっていませんが、ストレスを受け続けていることや、肝機能の低下が発症に関連しているのではないかと考えられています。このため、ゆっくりと過ごせる時間をつくったり、大量の飲酒は控えたりなど、ストレスや肝臓の負担になることを避けることも、有効な対策といえるかもしれません。