日本人の発症率が少なくない口蓋裂。その手術方法とは?

2018/4/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

口の中の天井部分が割れてしまう先天性異常・「口蓋裂」。比較的日本人の赤ちゃんの発症率が高い病変と言われていますが、この口蓋裂にはどういった手術が行われるのでしょうか?適切な手術時期と併せて解説していきます。

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口蓋裂とは?

口蓋裂は、先天性異常の一種です。妊娠初期の段階で、何らかの原因によって口蓋(口の中の天井部分)に割れ目ができてしまう状態を指します。本来であれば口蓋は結合するはずの部分ですが、遺伝的な要因や、出産年齢や妊婦の内服薬などの環境的な要因によって起こることがあります。

口蓋裂は口の中で起こるため、閉じている状態であればそれほど目立つことはなく、見た目への影響も少ないのが特徴です。しかし、口腔と鼻腔がつながってしまうために発語が困難になったり、食べ物が漏れて誤嚥性肺炎を引き起こしたりする恐れがあります。

なお、口蓋裂には「軟硬口蓋裂」「軟口蓋裂」「両側完全唇顎口蓋裂」「粘膜下口蓋裂」などと種類があります。口蓋のうち、前歯のある方は硬いために「硬口蓋」と呼ばれ、のどの方のやわらかい部分は「軟口蓋」と言います。この軟口蓋に割れ目があれば「軟口蓋裂」、硬口蓋にあれば「硬口蓋裂」です。また、割れ目の程度によっても分けることができ、鼻の奥まで割れている「両側完全唇顎口蓋裂」や、粘膜の下の筋肉だけに症状が出る「粘膜下口蓋裂」などがあります。

口蓋裂の手術をするべき時期はいつごろ?

口蓋裂かどうかは生まれた段階で発見できますが、生後すぐの赤ちゃんに対して手術をすることはありません。ただ、長期間そのままにしていると、発語障害が残ったり、顎の成長にも影響が出たりするので、1歳〜1歳半の間に手術をするのが一般的です。

以前は体重が9kg以上になることが手術時期の目安と言われていましたが、最近では従来より負担の少ない手術が可能になったので、より低年齢での手術が行われるようになりました。手術もより正確に行えるようになり、治療後の仕上がりなども改善してきています。

口蓋裂の手術方法について

口蓋裂の手術では、今まで「プッシュバック法」がよく行われていました。口蓋を後方に移動させることで、鼻との境目を作る治療法ですが、前方の粘膜に欠損が出てしまい、その後の顎の成長に悪い影響が出てしまいました。

そこで、近年ではプッシュバック法ではなく、「ファーラー法」という手術がメジャーになってきています。ファーラー法は、口蓋の粘膜骨膜を剥離し、引っ張って中央に寄せることで裂を閉鎖する治療法です。傷口が少ないため、術後の上顎の発育は良好なケースがほとんどです。ただし、口蓋裂の裂幅の狭い症例でないと適用が難しいため、症状によっては裂幅を狭くする術前矯正と併用して手術を進めることがあります。

おわりに:赤ちゃんが1歳を過ぎた頃には口蓋裂の手術を!

現在、口蓋裂の手術は、術後の影響の少ない「ファーラー法」によって行うのが一般的です。長く放置していると発音や顎の成長に悪影響が出る恐れがあるので、赤ちゃんが1歳を過ぎた頃には手術を実施するようにしてください。

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