記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食事の2時間後に血糖値が高い状態を食後高血糖といい、この場合糖尿病や動脈硬化のリスクが指摘されます。こちらの記事では、食後高血糖が及ぼす影響や検査方法、治療法について解説します。
食後高血糖とは、食後2時間経過しても血糖値が高い状態であることです。基準値は140mg/dlとされており、この値を超えると食後高血糖と判断されます。
健康な人であればインスリンというホルモンが正常に機能しているため、食後にゆるやかに上昇した血糖値は次第に下がっていきます。しかし、インスリンが不足していたり正常に作用しなかったりすると、食後に血糖値が急上昇したままなかなか下がりません。
また、食後高血糖はほかの高血糖とは異なり、食事の2時間後の血糖値は高くとも、空腹時血糖値は正常であるケースが多くあります。これは、食後高血糖の初期では、食事の後2時間よりも長く時間が経過すると血糖値が下がり、空腹時に測定すると正常範囲内の値を示すためです。
食後高血糖においては、以下のようなリスクが指摘されています。
食後高血糖である場合、糖尿病予備軍もしくは糖尿病の初期症状である可能性が考えられます。空腹時血糖値は低いために食後高血糖が長期間見逃され、糖尿病が進行していたケースも少なくありません。
食後高血糖は大血管疾患の独立した危険因子と言われています。食後高血糖は特に太い血管に影響するため、心筋梗塞などのリスクも高まります。ある自治体で継続して行われてきた調査では、食後高血糖の人は動脈硬化が進行しやすいが、空腹時血糖値の異常はリスクではないという報告があげられています。
動脈硬化の進行の要因にもなることから、すでに糖尿病にかかっている場合に糖尿病の合併症を起こしやすいとされています。
食後高血糖は、血液検査のHbA1cの数値やブドウ糖負荷試験(OGTT)で判断することが可能です。
HbA1cとは、血液中の糖が赤血球のヘモグロビンと結びついたたんぱく質であり、過去1~2ヶ月の血糖値を反映するものです。基準値は4.3~5.8%とされています。HbA1cは食後血糖値と関連しており、6.5%よりも高いと食後高血糖や糖尿病の可能性が高いと考えられます。
10~16時間絶食してからブドウ糖を75g含む飲み物を飲み、その後2時間の血糖値を調べるものです。絶食してブドウ糖を摂取する前と、ブドウ糖を摂取した30分後、60分後、90分後、120分後に採血して血糖値を計測します。
なお、HbA1cの値やブドウ糖負荷試験で計測された血糖値は、糖尿病かどうかの判断にも用いられます。
食後高血糖の改善のためには、生活習慣を改めることが大切です。また、薬物療法やカーボカウンティング(カーボカウント法)などが行われます。
適度な運動をする、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂る、早食いや大食いをしないようにする、飲酒や喫煙を控えるなどといったことが挙げられます。
一般的に良く用いられるのは、食後の急激な高血糖を抑える「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、インスリンを補充するための「インスリン注射」などです。
カーボカウント法とは糖尿病の食事療法やインスリン調整法のひとつで、「カーボ」とは炭水化物量の単位です。血糖値を上げやすい炭水化物の量を計算して摂取し、血糖値のコントロールをはかります。
食後高血糖のままでいると、気付かぬ間に糖尿病になっていたり、動脈硬化が進行したりするおそれがあります。生活習慣の見直しや薬物療法、食事療法などで血糖値を管理することが食後血糖値の改善、さらには糖尿病や動脈硬化の予防につながるため、すみやかに受診して治療を開始してください。