記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/2/1
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
過剰歯とは、本来の歯(永久歯)よりも多く生えてしまった歯のことです。他の歯に悪影響があるケースが多いため、大半は抜歯することになるといわれています。この記事では、過剰歯の抜歯の注意点について詳しく解説しています。
過剰歯(かじょうし)とは、歯茎に一般的に生えてくる本数(28本+親知らず4本)の永久歯に加えて、さらに歯茎から生えてくる余分な歯のことです。過剰歯は1本のことが多く、複数あることは珍しいといわれています。
過剰歯は、乳歯から永久歯に生えかわる、幼稚園から小学校低学年の子供のうち、約20人に1人の割合でみられ、男児のほうが女児の約3倍多くみられるといわれています。過剰歯の多くは歯茎の中に埋もれてしまっている状態で外から発見しにくく、自覚症状も少ないのですが、のちのちの歯並びや噛み合わせの悪さの原因になります。
過剰歯は、歯ができる基となる組織である「歯胚(しはい)」が何らかのきっかけで2つに分裂したり、歯の組織を生成し過ぎてしまったりすることが原因で起こると考えられています。
過剰歯は、原則として抜くほうが望ましいとされています。
それは、過剰歯をそのままにしておくと歯の健全な生育を妨げる可能性があるからです。そして、過剰歯は歯並びや噛み合わせに悪影響が生じたり、過剰歯の周囲が細菌や膿の温床となって、他の歯を傷めて侵食してしまう危険もあるのです。また、上の前歯の隙間が空く「すきっ歯」も、過剰歯が原因で起きることが多いといわれています。
例外的に、歯茎や他の歯に悪影響がないと認められる過剰歯であれば、すぐに抜歯手術せずに経過観察となる場合もあります。
過剰歯は、最初、歯茎の表に出てこないので存在がわかりません。もし、子供の歯が曲がったりズレたりして生えてくるときや、乳歯が抜けたのに永久歯がなかなか生えてこない場合は、過剰歯が原因になっているかもしれません。
早めに歯科医を受診し、原因を特定してもらうようにしましょう。
過剰歯に限らず、抜歯後は激しい運動を避け安静に過ごすようにしましょう。また、抜歯したところを触ったりすると細菌が繁殖する原因になります。子供が気にして触ったりしないように、しっかりを見守るようにしてください。また、うがいをしたり、血を出そうとつばを吐く回数が多くなると血が止まりにくくなることがあるので注意が必要です。
自宅に帰ってから出血してしまった場合は、ガーゼ(未使用の清潔なもの)などをまるめて抜歯したところにあて、強くかむようにさせましょう。1時間~2時間経っても血が止まらない場合は、すぐに病院に相談してください。
また血が止まった後でも、歯ブラシなどがあたると再出血する可能性があるので、歯みがきのときは十分注意してください。もし歯科医から歯みがき不要と指示があった場合は、歯科医の指示にしたがいましょう。
抜歯手術は、効き目を口内に限定した局所麻酔で行います。手術が終わった後も、しばらくは麻酔が効いている状態になります。感覚が麻痺していますので、誤って舌や内頬などを噛まないように気をつけましょう。
また、麻酔が効いているときに熱いものを食べたり飲んだりすると、やけどしやすいので食事のメニューにも注意するようにしてください。
過剰歯が見つかった場合は、原則として抜歯手術をするのが最善の方法といわれています。ただ、子供にとって歯を抜く手術は、身体的にも心理的にもかなりの負担になることもあるため、歯科医の判断にしたがうようにしましょう。また、抜歯後は保護者の十分なケアが求められます。歯磨きの際も、歯ブラシが手術部位になるべく当たらないよう、注意して磨くようにしたり、子供が傷口を触ったりしないようにきちんと見守ってあげるようにしてください。