記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/29
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
顎変形症とは、顎の位置や大きさが通常とは違ってくることで、発声や滑舌、咀嚼などに問題が起こることをいいます。根本的に治すには手術が必要になりますが、手術後に合併症が起こる可能性はあるのでしょうか。この記事では、顎変形症の手術について解説しています。
顎変形症(がくへんけいしょう)とは、あごの位置や大きさが一般的な場合とは異なっており、噛み合わせや発声や滑舌などに支障が出ている状態のことです。
下あごが通常よりも前に出ていたり、後ろへ引っ込んでいたり(下顎前突症・下顎後退症)、上あごと下あごが横方向にずれていたり(非対称症)、上あごと下あごの大きさが合っていなかったり(小下顎症など)の種類があり、発生だけでなく咀嚼機能に障害が起こったり、症状が重くなると口を開け閉めするのに苦痛を感じるようになったり、顔の変形で睡眠時無呼吸症候群を併発したりする場合があるのです。
ただし、特徴的なあごの形状をしていても、噛み合わせや滑舌に問題がなければ、顎変形症とは診断されないといわれています。
顎変形症は、X線(レントゲン)やCTスキャンでの検査の後に、(おもに口腔外科による)外科手術によって治療します。顎の骨を削り、位置を調整し、チタンプレートなどで固定して、歯を正常な位置に戻して噛み合わせを正常化するという、かなり大がかりな手術です。
また手術の前後に、歯にワイヤーを取り付けるなどの矯正歯科的な施術を行うことがあり、手術を含むすべての治療が終わるまでに数年を要することもあります。
合併症は全ての人に出るわけではありませんが、どんな手術にも必ずリスクは伴います。顎変形症の手術後は、顎関節が痛む、顔の感覚の麻痺、耳鳴りや頭痛などの合併症のリスクがあるといわれています。また、上あごの位置を動かす手術を行った場合は、鼻が変形したり、歪んで見えるようになってしまうこともあるようです。
手術を受ける前には必ず担当の歯科医から事前説明をしてもらい、合併症を含めたメリットとデメリットを十分理解してから手術を受けるようにしましょう。
上記でも軽く触れたように、顎関節症の手術の合併症として、耳鳴りが聞こえてきたり、耳が痛くなったりする可能性があります。
これは、上あごの位置をズラしたりメスで切る手術を行ったときに、耳が鼻や喉と繋がっている「耳管」が損傷するしたことが原因かもしれません。このような症状に気づいたらすぐに担当の歯科医に連絡しましょう。
顎変形症の手術は顎の位置や大きさを矯正することになるため、周囲の組織や神経を傷つけてしまい麻痺や耳鳴りなど、辛い合併症に悩まされるリスクがあります。繰り返しになりますが、手術の前には必ず合併症についての説明を医師からきちんと受けるようにしてください。
噛み合わせや発声などの日常動作に支障がある顎変形症を治すには、外科手術が必須と考えられています。ただし、矯正歯科の施術も含めて、完了までには年単位の期間がかかり、耳鳴りや顔面麻痺などの副作用が生じるおそれがあります。
大掛かりな手術のため、メリットだけでなく副作用のリスクについても事前に医師から詳しく聞いておくようにしましょう。