失語症の訓練について:家庭はどんなリハビリができる?

2018/1/9

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

失語症は、脳卒中などの病気の後遺症として起こる障害です。頭では話を理解できていても言葉にすることができなくなっている状態であり、回復のためにはリハビリが非常に重要になってきます。この記事では失語症のリハビリについて解説しています。

病院での失語症のリハビリの流れ

脳卒中、脳梗塞などの後遺症として起こる失語症のリハビリは、病院では言語聴覚士(ST)と呼ばれるリハビリスタッフ中心で行われます。失語症の治療は、脳卒中の発症後2週間の間に明らかな改善がみられるという報告もあり、できる限り早期に行う必要性があります。早い場合は急性期でもベッドの上で口の動きや言葉かけなどを始め、その後症状が安定してきたら言語療法室へ移動して本格的なリハビリが開始されます。

失語症では、まず標準失語症検査(SLTA)に基づいて検討してリハビリをすすめていきます。標準失語症検査(SLTA)は、失語症上の詳細な把握とリハビリ計画を立てるために「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」の5側面から症状をチェックしていきます。この検査で、その人がどの側面に一番大きく症状が出ているかや、症状の大きさがどのくらいかを把握し、それに合わせたリハビリを行っていくのです。

失語症は障害の強さに応じて「軽度」「中程度」「重度」の3段階に分類されますが、症状には個人差があるため、個人の症状に合わせたリハビリを行うことが大切です。

リハビリでは、名前を言う、挨拶をする、会話をするなどの「発話訓練」、言語聴覚士が言った言葉を復唱する「復唱訓練」、短い文章を声に出して読む「音読訓練」などを行っていきます。
また話すだけでなく、聞いて理解する能力を改善するための「聴覚的理解力訓練」、カードに書かれた絵の名前を言う「呼称訓練」、簡単な文字カードを読み、絵カードの中から対応するものを選ぶ「読解訓練」、自分や家族の名前や日常使う物の名前を書く「書字訓練」なども行います。さらに、伝えたいことをジェスチャーや絵を併用して伝えるための「実用的コミュニケーション訓練」などもあります。

自宅ではどのようなリハビリをすればいいの?

自宅でも失語症のリハビリを続けることは可能です。言語聴覚士のようなプロでなくても、日常生活の中で言葉の力を回復させることができます。大切なポイントは「会話を理解する力」「言葉を話す力」に気をつけるということです。

リハビリと言っても、必ずしも難しく考える必要はありません。日常生活を送るうえでは、こまめに会話することが一番効果的とされています。いきなり長い会話をするのではなく、2、3語レベルの短い文章で話すことから始めてみましょう。たとえば「お茶 飲む?」「今日は いい天気だね」「今日の 夕飯は 何がいい?」など短く理解しやすい言葉で話しかけることをおすすめします。
また、早口だと聞き取りにくいので、ゆっくりとわかりやすい発音を心がけてください。日常生活の中で繰り返し何度も会話をすることは、家族だからこそできる効果的で重要なリハビリといえます。もし、本人がわからない言葉があるようなら、同じ意味の違う言葉に言い換えてみましょう。

短い文でも理解が難しい場合は、物や絵を見せて会話する方法を試してみてください。例えば「リンゴ 食べる?」と聞く際、実際にリンゴを見せながら聞くことでより理解しやすくなります。慣れてきたらホワイトボードに文字を書きながら行うと、言葉でも伝えることで理解しやすくなるうえに、言葉の聞き取りと文字の読み取りの2つのリハビリが同時にできます。

リハビリを行う際に気を付けたいこととは?

 

リハビリを行う際に注意しておきたいことを3点紹介しておきます。

まず、第一に失語症の方が話している時、途中でつまってしまっても話をさえぎらないということです。失語症の人は、頭の中で伝えたいことは理解していても、うまく言葉にできずに時間がかかっている状態です。このタイミングで話をさえぎってしまうと、本人の心を傷つけ、やる気を削いでしまいます。ゆっくりと言葉にするのを待ってあげましょう。
もし、ワンクッション待ったうえで本人が言葉にできず困っているようなら、「はい」「いいえ」で答えられる質問に変えたり、選択肢を上げてみるなどの方法を試してみてください。

次に注意しておきたいのが、相手は言葉を出しにくくなっていますが、思考能力は低下していないという点です。失語症は認知症とは違い、物事の判断力自体は低下していません。簡単にわかりやすい会話を、と心がけるのはいいですが、相手を子供扱いはしないようにしましょう。

3つ目は理解力を上げるためにジェスチャーや実物、写真、イラストなどを組み合わせることです。相手が言葉を思い出せない時、理解しにくい時は実物や写真、ジェスチャーなどさまざまなものを使ってコミュニケーションをとりましょう。

おわりに:根気よく長期的なリハビリを続けて改善を目指そう!

言葉は人のコミュニケーションの大きな部分を占めるため、それに障害が出る失語症は本人のみならず家族にとっても辛い状態といえるでしょう。しかし、失語症はリハビリを続けることで改善が目指せる障害です。特に家族との会話はとても大きな役割を持ちますから、言語療法士によるリハビリを積極的に行っていきましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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