甲状腺がんの治療によって引き起こされる合併症とは?

2018/1/10

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

甲状腺がんが、甲状腺にがんができる病気です。治療の基本は手術をいわれていますが、状態によって他の治療法が選択される場合や、複数の方法を組み合わせて治療を進めていく場合があります。この記事では、甲状腺がんの治療と治療の合併症についてわかりやすく解説していきます。

甲状腺がんについて

甲状腺は首の下ののど仏辺りにある内分泌器官であり、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは体の新陳代謝や生命活動に深く関わるホルモンです。

甲状腺がんは甲状腺にできるがんですが、しこり以外の症状がでないことが多く、進行が非常にゆっくりで予後が良好なケースが多いという特徴があります。しかし、症状がないからといって放置していると、非常にまれにではありますが筋層や気管、食道など周辺の組織へがん細胞が浸潤することがあるので注意が必要です。

さらに頸部リンパ節までがん細胞が届くと、肺や骨にまでがん細胞が転移することもあります。女性の方が圧倒的に発症数が多く、30~50歳代に発症することが多いといわれています。

甲状腺がんの代表的な治療法

甲状腺がんは、主に外科手術で治療が行われます。がん細胞の広がっている範囲に応じて、甲状腺を一部取り除く手術や甲状腺を全て取り除く手術(甲状腺全摘出術)が選択されます。がんが周辺の組織まで広がっているときには、頸部リンパ節、食道、喉頭まで広範囲に取り除くこともあります。

また治療効果を高めるために、放射線療法が並行されることもあります。甲状腺がんの放射線治療は、放射性ヨードを内服して体の内部から甲状腺にだけ放射線を当てるアイソトープ療法が行われます。

そして甲状腺がんの進行を早めるといわれているTSHというホルモンの分泌を抑えるために、TSH抑制療法というホルモン療法が行わることがあります。その他、悪性度が高い場合は抗がん剤を使った化学療法を取り入れることもあります。

合併症①:甲状腺ホルモンの分泌量が減る?!

甲状腺がんの治療法としては手術療法が中心です。そのため手術で甲状腺を全摘出すると、甲状腺から出されていたホルモンは全く分泌されなくなってしまいます。甲状腺ホルモンがないままでは体の機能を正常に保つことが難しくなってきます。

そのため、甲状腺を全て切除した場合には体の外から必要なホルモンを常に補充しなくてはいけません。
ただし甲状腺の一部のみを切除した場合では、甲状腺ホルモンの分泌量がある程度保たれ、手術の後にホルモンを補充する必要がないケースも少なくないといわれています。

合併症②:その他の代表的な合併症

甲状腺の裏側には副甲状腺があります。手術で甲状腺を全摘出するときには副甲状腺を取り除いてしまうことになるので、副甲状腺ホルモンの分泌不足が起こります。
副甲状腺ホルモンは血中カルシウム濃度の調整を担っているため、手術後は血中カルシウム濃度の低下を防ぐために、カルシウム製剤とビタミンDを服用する必要があります。

また甲状腺の後ろにある半回神経までがん細胞が広がっていた場合は、半回神経も手術で取り除かなければいけません。半回神経と取り除くと、声帯の動きが不十分になり声がかすれてしまうことがあります。半回神経は左右1対ありますが、どちらか一方だけが傷ついただけでも症状がでる可能性があるのです。

おわりに:それぞれのメリットとデメリットを正しく理解し、医師と相談しながら納得のいく治療方法を選択しよう

甲状腺がんは進行が遅く悪性度も低いといわれていますが、まれに周囲の組織にがんが広がってしまうことがあります。それを防ぐためには、早期のうちに治療を始めることが重要です。どの治療にもメリットとデメリットがあり、症状や進行度、患者の健康状態などによって推奨される治療法も変わってきます。
治療前には必ず医師から事前説明をしてもらい、メリットとデメリットの両方を理解したうえで納得のできる治療方法を選ぶようにしましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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