記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
甲状腺癌は、主に代謝機能を司る臓器である甲状腺に癌細胞ができる病気です。普段あまり意識することがない臓器のため、異常があることに気づくのが遅くなってしまう特徴があります。この記事では、甲状腺癌の疑いがある兆候や治療法について解説します。
甲状腺癌は、のどぼとけの下方にある甲状腺に発生する癌です。甲状腺は主に代謝機能を司る臓器ですが、その存在をほとんど意識することがない臓器でもあります。このため異常が起きても気付きにくく、腫瘍がある程度大きくなって首の腫れに気づいたり、食べ物を飲み込みにくく感じるようになって初めて検査を受けるケースが多く見られます。
甲状腺癌には、分化癌(乳頭癌、濾胞癌、髄様癌)と未分化癌、そしてリンパ系の癌が甲状腺から発生する悪性リンパ腫があります。甲状腺癌患者の約9割を占める乳頭癌は比較的進行が遅く、治療などによって予後が良いとされています。一方、未分化癌は悪性度が高く、転移を起こしやすいと言われています。癌の種類によって、症状の進み方や治療方法が異なります。
甲状腺癌は、年間で人口10万人中7人の割合で発症すると言われています。すべての癌の約1パーセントほどを甲状腺癌が占めているとされています。検査方法や治療法の進歩によって、死亡率は減少傾向にあります。
首の腫れやしこり、飲み込みにくさや声かすれなどがある場合、甲状腺癌を発症している可能性を考慮しつつ、問診やさまざまな検査が行われます。
検査は、症状の現れ方によって甲状腺の異常をホルモン量で診断する血中ホルモン検査や血液学的検査といった血液検査や、超音波で甲状腺を診るエコー検査、造影剤を使ったCTスキャンや声帯などの様子を診る喉頭鏡検査などが行われます。また、穿刺吸引細胞診検査(エコーで甲状腺を診ながら注射針を刺し、甲状腺組織を採取して顕微鏡で観察する)を行うと、乳頭癌の場合ほぼ100パーセント診断がつくと言われます。穿刺吸引の検査で診断がつかなかった場合は、手術を行って腫瘍の細胞を摘出し、顕微鏡で癌かどうかを調べることもあります。
放射性ヨードを服用し、体内でヨードが放出する微量の放射線をガンマカメラという装置で画像にしたものを元に診断するシンチグラフィーという検査が行われることもあります。この検査を行うと、腫瘍の大きさや形、転移の様子などが確認できます。
甲状腺癌で最も一般的な治療法は手術療法で、癌が発生したほうの甲状腺を切除する葉切除術、一部だけを残してすべて摘出する甲状腺亜全摘術、癌が発生した頸部リンパ節を摘出するリンパ節郭清術があります。
手術以外では癌に放射線を照射する放射線療法や、放射性ヨウ素を使って癌細胞を破壊する放射性ヨウ素療法があります。薬剤で癌細胞の増殖を抑制・死滅させる化学療法のほか、甲状腺ホルモンの働きを抑えて癌細胞の増殖を止める甲状腺ホルモン療法もあります。
甲状腺癌の治療中は甲状腺ホルモンの必要量が不足するため、患者には甲状腺ホルモン補充錠剤が処方されます。正常な細胞を傷つけず、特定の癌細胞だけを攻撃する薬などを用いる標的療法が選ばれることもあります。患者の症状や甲状腺癌のタイプ、進行度や転移の有無などによって、最適とされる治療法が選ばれます。
他の癌と同じく、甲状腺癌も早期発見・早期治療が予後の良し悪しに関わります。首の腫れや食べ物が飲み込みにくいなど、気になる症状がある時は、念のため病院で検査してもらいましょう。