記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/31 記事改定日: 2020/9/11
記事改定回数:1回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
ガマ腫とは、舌下腺(舌の下部にある唾液腺)にできる嚢胞のことです。治療の基本は手術になりますが、手術以外の治療法はあるのでしょうか。この記事では、ガマ腫の症状や治療方法について解説していきます。
ガマ腫とは、口の中の唾液(つば)をつくる唾液腺のひとつである舌下腺(舌の下にあります)をおおう粘膜部分が、膨らむような形でできる粘液嚢胞(のう胞)のことをいいます。
粘液嚢胞は、下唇や口内の底のほう、頬の粘膜にも生じますが、舌の下の唾液腺(舌下腺)にできた粘液嚢胞を、特に「ガマ腫」と呼んでいます。
ガマ腫の原因は、唾液が出なくなって粘膜の下に溜まってしまったためと考えられています。たとえば歯磨きなどの際に、誤って舌下腺が傷つけられてしまい、舌下腺が塞がれて唾液が出なくなります。ガマ腫は、男性よりも女性にできやすいとされ、年齢層としては、子供から30代までの若い世代に多いです。
ガマ腫が数センチのほどの大きさになると、舌が持ち上げられるような違和感を覚えるようになります。ガマ腫の粘液嚢胞が破れると、中からどろりとした液体(唾液の水分が抜けた状態のもの)が出てきて、膨らみはなくなり、腫れは治まります。しかし、ほとんどの場合、しばらくするとガマ腫が再発します。
ガマ腫は舌下腺にできることが多いとされていますが、まれに顎下腺にできることもあります。顎下腺は、顎のやや後ろ側に左右対になって存在する唾液腺の一つですが、ここにガマ腫ができると患側の顎にしこりのような膨らみが生じます。
膨らみは大きくなったり小さくなったりするのが特徴で、顎の腫れに伴う痛みやかゆみなどの症状を伴うことは少ないとされています。進行して嚢胞が大きくならない限り舌下腺のガマ腫のように口の中に異常が生じることはありません。
ガマ腫の治療は、手術と手術をしない方法があります。
ガマ腫は通常、手術によって治療を行います。「開窓療法」「開窓術」とも呼ばれるもので、できた粘液嚢胞を切り破って、粘液を外に取り出し、嚢胞の膨らみを取り除くことで回復を目指します。
しかし、手術で切開したとしても、ガマ腫は再発してしまうことがあるので経過観察が必要です。再発を頻繁に繰り返し、開窓療法では完治しないようなら、舌下腺を摘出し、ガマ腫ができる元を断つ手術を行うことになります。たとえ舌下腺を摘出しても、他に、耳下腺や顎下腺といった唾液を出せる器官は口内にあるので問題ないとされています。
ピシバニール(OK-432)という製剤をガマ腫の膨らみの中に注入する方法があります。ピシバニールは注入により発熱などの症状が起こったり、一時的にガマ腫の腫れがさらに大きくなったりする場合があります。ピシバニールによるガマ腫治療では、ほとんど再発もなく、成功率も高いといわれています。
ガマ腫の手術(開窓療法)は、前述の通り、再発してしまうリスクがあります。
また、ピシバニールを注入する方法では、ピシバニールにペニシリンが含まれている関係で、ペニシリンアレルギーの保持者に対しては採用できません。また、しばらくはさらに粘液嚢胞の腫れが大きくなることから、舌が上方へ持ち上げられてしまい、呼吸困難に陥るリスクもあります。
ガマ腫は深刻な症状ではありません。ガマ腫が膨らむと、自分でつついて破裂させ、やり過ごしている人もいるようです。しかし、自分で破ると再発しやすく、細菌感染をするおそれもあります。口腔外科を受診し、治療法を相談してみてください。