ニューモシスチス肺炎の治療薬「ST合剤」とは?

2018/1/11

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

ニューモシスチス・カリニ肺炎とは、ニューモシスチス・イロベチーへの感染が原因で起こる肺炎です。免疫が正常に機能していれば通常発症することはありませんが、何らかの原因で著しく免疫力が低下すると発症します。この記事では、ニューモシスチス・カリニ肺炎の治療薬『ST合剤:バクタ®』について解説します。

ニューモシスチス肺炎とは?

「ニューモシスチス肺炎」とは、ニューモシスチス・イロベチーという微生物の感染によって起こる肺炎です。この微生物はこれまで原虫(単細胞の微生物)と考えられてきましたが、いまだ不明な点も多いものの現在では真菌(カビ)の一種であるとされており、ヒトを含めたさまざまな動物にもともと感染しています。

多くの人は生後すぐに感染しますが、正常な免疫力があれば増殖することなく病気を起こすことはありません。しかし、化学療法や免疫抑制薬の長期の服用、エイズ(後天性免疫不全症候群)などによって免疫力が低下すると増殖は止められなくなり、ほとんどが肺炎として発症します。

代表的な症状とリスクについて

ニューモシスチス・カリニ肺炎は、日和見感染(免疫力の低下による感染)として発症することがほとんどで、エイズ発症者などの主な死亡原因となっています。
発症すると、発熱、乾いた咳、呼吸困難の3つが主症状としてあらわれ、体のだるさや、体重減少、息苦しさをともなって徐々に悪化します。同時に肺で血液を酸素化する能力が大きく低下して呼吸困難になり、重症化するとチアノーゼ(皮ふや粘膜が青紫になる)を起こします。胸部のX線(レントゲン)写真では両側の肺全体がかすみ、スリガラスのような陰影が出ます。適切な治療を行わなければ最終的に心肺停止となり、確実に死に至ります。

治療薬の「ST合剤」には、どんな作用があるの?

『ST合剤』は病原性微生物を殺菌する薬で、それらを原因とするさまざまな感染症に用いられます。商品名としてはバクタ®などがあります。病原性微生物には、細菌やウイルス、真菌、原虫などが含まれ、特に細菌による感染症に有効とされていますが、ニューモシスチスにも有効です。
ニューモシスチス・イロベチーという酵母のような真菌に強い抗菌作用を発揮することから、治療に用いられるほか発症抑制薬として使用することも可能です。ST合剤のサルファ薬が微生物の葉酸の合成を、トリメトプリムが葉酸の活性化を防いで相乗効果を発揮します。2012年に特例でニューモシスチス肺炎に対する効能が追加承認されています。

「ST合剤」の使用上の注意点

ST合剤は、副作用が多いことから日常的な感染症への処方が減った薬です。特にアレルギーのある人はショック症状を起こす可能性があり、原則使用禁止になります。
アレルギー性の病気や血液の病気のある人、妊娠中の服用なども避ける必要があり、腎臓の働きが低下している場合も調整が必要です。飲み合わせに注意しなければならない薬も多く、抗リウマチ薬や抗血栓薬、抗けいれん薬、免疫抑制薬、強心薬、血糖降下薬、エイズの薬などとの併用にも気をつけましょう。また、症状や治療目的によって飲み方が変わることから、用法や用量、服用期間については必ず医師の指示を守ってください。再発したりや治りにくくなる可能性があります。

おわりに:効果も副作用も強い薬。気になる症状が出たらすぐに医師に相談しましょう

『ST合剤』は、ニューモシスチス・カリニ肺炎で第一に選択される重要な薬です。しかし副作用が多く、飲み方、飲み合わせなどに十分な注意が必要です。気になる症状が出た場合には、すぐに担当の医師や薬剤師に相談しましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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