保存療法と手術・・・前十字靭帯損傷の治療法を解説

2018/2/20

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

前十字靭帯とは、膝を固定する重要な役割を持つ靭帯であり、前十字靭帯損傷を起こすとひどいときには日常生活に支障が出るほどの症状を招く可能性があります。この記事では前十字靭帯損傷の保存療法と手術の2つの治療法のメリットとデメリットの解説をしていきます。

前十字靭帯損傷が起こりやすい状況とは?

膝関節には内側側副靭帯、側副靭帯、後十字靭帯、前十字靭帯の4本の靭帯(じんたい)があります。前十字靭帯は膝関節の中央にあってすねの骨(脛骨)の前方と太ももの骨(大腿骨)の後方をつないでいる強力な靭帯で、主に大腿骨に対して脛骨が前にずれたりねじれすぎないように制御しています。

「前十字靭帯損傷」はスポーツ選手に多い外傷として知られています。損傷はスポーツ活動中に起こることが大半であり、ジャンプ後の着地、疾走中の急な方向転換やストップ動作、相手との衝突などによって膝関節がねじられて損傷します。ブツッという音を感じ、その直後から体重がかけられないくらいに痛み、徐々に膝関節内に血がたまって腫れあがります。

治療せずに放置すると膝がガクッとはずれるような「膝崩れ」が起こり、半月板や軟骨の損傷を引き起こす可能性があり、「外傷後変形性膝関節症」へ進行すると日常生活でも痛みを抱えることにもなりかねません。

治療法①:保存療法について

急性期を過ぎると痛みと腫れが軽くなりますが、関節の安定は損なわれたままで損傷の程度によっては膝崩れが生じることもあります。
治療法には大きく分けて手術をしない「保存治療」と「手術治療」があります。スポーツを継続するならば手術が選択されるケースも多いですが、治療法は患者の活動性や合併損傷、治療プログラムへの参加可能性などを考慮して総合的に判断することになります。

保存療法では、前十字靭帯に負担がかからないよう装具を用いて膝関節を固定し、自然に治癒するのを待ちます。ただし靭帯自体が自然にくっつくことは難しく、膝の不安定性と不安感は痛みが治まったあとも残ります。治癒には時間がかかるうえに、筋力の低下や関節可動域にも影響が出るため、治療後には無理のない機能回復トレーニングが必要となります。人によってその後も階段や段差などの日常動作でも膝崩れを起こすことがあり、その場合には手術治療が必要になることもあります。

治療法②:手術療法について

手術には「再建術」という、損傷した靭帯の代りに自分の体の他の腱を移植する方法があります。炎症や腫れが落着いた2~3週間後に行うのがよいとされ、それ以上遅くなると他の損傷のリスクが高まるといわれています。

再建術には2つの代表的な方法があり、ひとつは骨が付着した膝蓋腱(膝のお皿の下にある腱)を使うものです。腱が太く丈夫でかつ骨が両端についているため移植した靭帯がくっつきやすいメリットがあるものの、手術跡が大きく切り取った部分に痛みが残るなどのデメリットがあります。
現在では、もうひとつのハムストリングス腱(太ももにある腱)を用いる方法が主流となっています。2方向に移植することから損傷前に近い状態まで再建することができるとされ、傷も痛みも少なく筋力の回復が早いと考えられています。ただし、回復までに時間を要するなどのデメリットがあります。
その他には、膝屈筋腱を用いた再建術が行われることもあります。

おわりに:自然治癒で根治は望めません。専門医に相談して適切な治療を計画してもらおう

前十字靭帯損傷はスポーツ外傷として知られる損傷ですが、放置すれば日常生活も困難なものになりかねません。必ず整形外科を受診して正しい診断を受け、治療について詳しい説明を聞いたうえ、必要に応じて膝を専門とするスポーツ整形外科を紹介してもらい、納得のいく治療方法を選択するようにしましょう。

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