記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2024/3/13
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
春季カタルとは、アレルギー性結膜炎が慢性、重症化したものです。発症する時期は決まっていませんが、春から夏に症状が悪化しやすいといわれています。この記事では、春季カタルの症状の特徴と治療内容、予防のために気をつけることなど、春季カタルの基本情報について解説していきます。
春季カタルはアレルギー性結膜炎の慢性重症型です。アレルギー性結膜炎の主症状は眼のかゆみ、眼痛、眼脂、充血などであり、結膜炎の中でも、眼瞼結膜(まぶたの裏)に乳頭と呼ばれる隆起ができ、角膜と結膜の境界部にも病変が及ぶものを春季カタルと呼びます(結膜の増殖性変化といいます)。1年中起こる可能性がありますが春~夏に症状が悪化しやすく、アトピー性皮膚炎を合併しやすいといわれています。
アレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因物質)との接触により生じる体の反応が発症要因であり、ハウスダストを筆頭に、スギ、ヒノキ、ブタクサなどの花粉、ダニ、犬猫の毛、フケなどがアレルゲンとなります。春季カタルは思春期までの男児に多く見られる病気であり、10歳を過ぎると自然に治癒していくことが多かったのですが、近年では20歳代でも強い症状がみられるケースがあります。
春季カタルは、瞼の裏にぼつぼつとした凹凸状の病変(乳頭)が形成されます。重症になるほど乳頭も大きくなり、乳頭が角膜を傷つけて強い目の痛みや充血などを引き起こし、なかには視力障害を生じるケースもあります。なお、春季カタルでは、以下のような自覚症状が見られます。
春季カタルを発症した場合はできるだけ早く治療を開始することが大切です。強い目のアレルギー症状がある、市販のアレルギー用目薬を使用しても症状が緩和しない、目の痛みや視力低下などの症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。
春季カタルの第一選択薬は抗アレルギー薬です。花粉症と同様、かゆみを引き起こすヒスタミンに作用するヒスタミンH₁受容体拮抗薬や、ヒスタミンなどを増やさないようにするメディエーター遊離抑制薬などが使われます。
かゆみなどの症状がひどく、抗アレルギー点眼薬だけでは症状が改善されない場合は免疫抑制点眼薬が併用されます。抗アレルギー点眼薬と免疫抑制点眼薬の併用で効果が得られないほど重症の場合は、ステロイド点眼薬が追加されることがあり、状態によってはステロイドの結膜下注射や手術を行うこともあります。
春季カタルは、発症すると完治までに時間がかかり、その間ステロイド薬などの副作用によって感染症にかかる可能性があります。このため、発症を予防することが大切になってきます。春季カタルはアレルギーによって引き起こされるため、春の花粉症シーズンなどの特定の季節に「目のかゆみ」「涙目」「鼻水」「くしゃみ」といった症状が現れる人は、早めに病院を受診しましょう。また、アレルギーの原因が分かっている場合は、それらを避けることも大切です。
春季カタルの治療法は、抗アレルギー薬が第一選択薬ですが、症状がひどい場合などは免疫抑制点眼薬やステロイド点眼薬も用いられます。春季カタルは学童期の子どもに発症することが多いため、子どもすでにアレルギー性結膜炎を発症しているときは、春季カタルに移行しないように早めに病院を受診することをおすすめします。また、アレルギーがある人は、日頃からアレルゲンを避けるようにしてください。