記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
クッシング病はコルチゾールというホルモンが過剰分泌することで様々な症状が現れます。これは下垂体に腫瘍ができることが原因です。クッシング病は、ムーンフェイスなどの外部所見以外にも、命に関わる深刻な合併症を引き起こすことがあります。下記の記事で詳しく解説していくので参考にしてください。
クッシング病は、下垂体に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を大量に分泌する腫瘍ができることで、ステロイドホルモンの一種であるコルチゾールが副腎から過剰に分泌される疾患です。
クッシング病の特徴としてコルチゾール自身の働きが低下する一方、インスリンにより脂肪が蓄えられるため、脂肪がつきやすい顔や体幹が太り、筋肉の多い腕や脚は筋肉が落ちて細くなります。
こうして、顔に脂肪が沈着して満月のように丸くなった状態の満月様顔貌(ムーンフェイス)、肩に脂肪が沈着する野牛肩(バッファローハンプ)、腹部中心の肥満で、手足が相対的に細くなる中心性肥満といった独特の症状が現れます。
さらに、急激な肥満により皮膚が皮下で断裂し、腹部周辺が筋状の模様になる皮膚線条と呼ばれる症状が現れることがあります。
その他にも、薄く傷つきやすい皮膚、にきび、あざ、むくみ、関節部の皮膚の黒ずみなどが特徴的な症状として挙げられると共に、うつなどの精神症状も現れやすくなります。
また、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症など生活習慣病と類似した合併症を発症することも少なくありません。
クッシング病はステロイドホルモンのコルチゾールが過剰に分泌されている病気です。このホルモンには、骨吸収(骨溶解)促進、胃酸分泌促進、脂質代謝異常などの作用があることから、血糖値上昇(ステロイド糖尿病)、骨粗鬆症、消化性潰瘍といった合併症や症状が現れます。
これらを放置すると、脳血管障害、心臓病、病的骨折、精神症状などの合併症がおきやすくなります。重症化すると、著しく免疫力が低下するため、感染に弱くなり、敗血症になることもあります。これらの合併症の結果の死亡率は、健常者の数倍に達するといわれています。
クッシング病の治療は、下垂体にできている腫瘍を手術で取り除くことが第一選択となります。手術は通常、経蝶形骨洞手術(経鼻的手術)が行われます。なお腫瘍以外の下垂体の正常な部分からのACTH分泌が手術前のコルチゾール過剰の影響で抑制されている状態のため、手術で腫瘍が全部排除できた場合でも回復するのに通常は1年、人によっては2年近くかかるといわれています。
腫瘍の取り残しがあったり、腫瘍が再発した場合には、放射線治療を追加することがあり、ガンマナイフなどによる定位放射線治療が、適切とされています。
手術で改善しない場合には薬物療法も検討されますが、下垂体腺腫から産生されるACTHを確実に抑える薬は今のところありません。そのため、副腎に作用して直接にコルチゾール産生を抑える薬などを使用して治療を進めていきます。
クッシング病は、満月様顔貌や中心性肥満といった特有の外部所見に加え、高血圧や糖尿病などさまざまな病気を引き起こし、治療が遅れると生死に関わる事態を招きかねません。該当する症状が現れている場合は速やかに受診し、手術を中心に早期の治療にふみきりましょう。