記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/15 記事改定日: 2020/7/6
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
尿崩症とは、腎臓の尿細管で水分の再吸収ができなくなってしまうことで多尿がおこる病気です。多尿で体内の水分が失われるため、多飲も現れるようになります。この記事では、尿崩症の原因や症状、治療などについての基礎知識を紹介していきます。
腎臓の尿細管では、原尿から水分やナトリウムイオンなどを再吸収して、体内の水分調整を行っています。そして、水分の再吸収や尿の濃縮をつかさどり、体内の水分量をコントロールしているのが脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(バソプレシン)です。
抗利尿ホルモンの分泌や作用に障害が生じると、尿細管から水分の再吸収ができなくなり、その結果、「多尿」と「多飲」が発症します。このような症状が起こる病気が尿崩症です。
尿崩症には、中枢性尿崩症と腎性尿崩症の2種類があります。
「中枢性尿崩症」は、脳下垂体後葉に問題があり抗利尿ホルモンの分泌が低下している場合に起こる尿崩症です。
上記以外では頭部の外傷や手術後に起きることがあり、原因不明の特発性も多くみられます。
中枢性尿崩症では、腎臓で水分を吸収するホルモンの産生が低下するため、口にした水分のほとんどが尿として排出されるため、体内の水分が慢性的に不足した状態となります。その結果、常に口が乾きやすく、多量の水分摂取を行う「多飲」を引き起こします。
尿意は昼夜問わず生じ、1日に3~20Lもの尿が排出されるようになります。尿は多量の水分が含まれるため、非常に薄い状態となり、色がほとんどないのが特徴です。
「腎性尿崩症」は、抗利尿ホルモンの分泌は正常でも、腎臓の機能に異常があるために抗利尿ホルモンが上手く働かなくなってしまう状態の尿崩症です。
原因には、抗利尿ホルモン受容体の遺伝子異常や腎臓の水チャンネルの遺伝子異常によるものがあります。
腎性尿崩症は薬物の副作用によって引き起こされることがありますが、遺伝による生まれつきの病気であることが多く、母体内では羊水過多などの症状が見られます。
また、出生後は大量の尿と口渇による多飲が引き起こされます。乳児など大量の水分を摂取することができない場合には、血液中にナトリウムが蓄積した状態となって痙攣や昏睡、興奮、錯乱などの神経症状が現れやすいのが特徴です。
尿崩症を発症した場合は、できるだけ早く適切な対処を行うことが大切です。症状の現れ方は子供と大人によって異なることもありますが、それぞれ次のような症状が見られるときは放置せずに病院に相談するようにしましょう。
主な症状は口の乾き、水分摂取量の増加、尿量の増加です。
子供の場合は、おねしょの増加、体重増加不良、原因不明の発熱などの症状が見られやすいとされています。
大人の場合も主な症状は、口の乾き、水分摂取量や尿量(1日に3ℓ以上)の増加です。
また、ダルさや食欲不振、目や皮膚の乾きなどが目立つこともあり、落ち着きのなさや異常行動といった精神的な異常が生じることもあります。
尿崩症が疑われた場合は、以下の検査が行われます。
尿崩症の治療方法は、以下のように中枢性か腎性かで変わってきます。
中枢性尿崩症に対しては、足りないホルモンを補充する療法として、抗利尿ホルモンが用いられています。デスモプレッシンを点鼻投与することで、30分以内に効果が現れ、6時間以上効果が持続することが期待できます。
腎性尿崩症には水補給や原因疾患の治療で対処します。チアジド系利尿薬などを用いることもあります。
中枢性尿崩症と腎性尿崩症に症状の違いはありませんが、治療法が異なるため両者を区分する検査や診断が重要です。脳腫瘍や頭部外傷など別の病気が原因となっていることもあるため、顕著な多尿の症状が現れたら速やかに受診するとよいでしょう。