尿崩症とは ~ 症状・原因・治療 ~

2018/1/15

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

尿崩症とは、腎臓の尿細管で水分の再吸収ができなくなってしまうことで多尿がおこる病気です。多尿で体内の水分が失われるため、多飲も現れるようになります。この記事では、尿崩症の原因や症状、治療などについての基礎知識を紹介していきます。

尿崩症とは?どんな症状が出るの?

腎臓の尿細管では、原尿から水分やナトリウムイオンなどを再吸収して、体内の水分調整を行っています。そして、水分の再吸収や尿の濃縮をつかさどり、体内の水分量をコントロールしているのが脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモン(バソプレシン)です。抗利尿ホルモンの分泌や作用に障害が生じると、尿細管から水分の再吸収ができなくなり、その結果、「多尿」と「多飲」が発症します。このような症状が起こる病気が尿崩症です。

主な症状である多尿は、突然発症します。また多尿に伴う脱水状態のため、喉が渇いて頻繁に水分を飲むようになります。健康な成人の1日尿量は、1.2~1.5Lですが、尿崩症になると1日3L以上となり、ひどいときには10L以上になることもあります。夜間の排尿回数が多くても1回量が少ない夜間頻尿とは異なり、睡眠中も尿量が減少しません。一晩に何回も排尿と喉の渇きによる多飲を繰り返します。皮膚や粘膜の乾燥、倦怠感などの症状が現れたり、後述する中枢性尿崩症では成長障害を伴う場合もあります。

尿崩症の原因

脳下垂体後葉に問題があり抗利尿ホルモンの分泌が低下している場合は、「中枢性尿崩症」と呼ばれます。脳腫瘍(胚芽腫など)や下垂体自体の障害(重症成長ホルモン分泌不全性低身長症に伴ったもの)などが原因になることもありますが、原因不明の特発性も多くみられるといわれています。また、頭部の外傷や手術後に起きることもあれば、脳下垂体に伝わる神経系の障害が原因の場合もあります。その他、遺伝子の異常によって生じるケースも報告されています。

一方、抗利尿ホルモンの分泌は正常でも、腎臓の機能に異常があるために抗利尿ホルモンが上手く働かなくなってしまうものは「腎性尿崩症」と呼ばれ、抗利尿ホルモン受容体の遺伝子異常や腎臓の水チャンネルの遺伝子異常によるものがあります。

尿崩症の診断

尿崩症が疑われた場合は、血液検査で浸透圧やナトリウム、抗利尿ホルモンの値を調べ、尿中の浸透圧や抗利尿ホルモンを測定します。尿崩症では血中浸透圧は高く、尿中浸透圧や抗利尿ホルモンは低値となります。
さらに水制限試験では、摂取水分量を制限し、尿量や尿比重、尿浸透圧の変化を調べます。尿崩症では尿浸透圧は上昇しません。

そしてバゾプレシン負荷試験も行われます。これは抗利尿ホルモン(バソプレシン)作用のあるピトレシンを皮下注射するもので、中枢性尿崩症と腎性尿崩症の鑑別に有効です。中枢性では尿量が減少しますが、腎性では変わりません。
さらにMRIにて下垂体後葉の異常の有無をチェックします。中枢性尿崩症では下垂体後葉の信号が低下し、前葉とほぼ同一となります。
加えて、糖尿病や腎臓病などの除外や心因性多飲多尿の有無を調べます。

尿崩症の治療法

中枢性尿崩症に対しては、足りないホルモンを補充する療法として、抗利尿ホルモンが用いられています。デスモプレッシンを点鼻投与することで、30分以内に効果が現れ、6時間以上効果が持続することが期待できます。
一方、腎性尿崩症には水補給や原因疾患の治療で対処します。チアジド系利尿薬などを用いることもあります。

おわりに:中枢性と腎性で治療法が違う。多尿が続くときは必ず病院で検査を

中枢性尿崩症と腎性尿崩症に症状の違いはありませんが、治療法が異なるため両者を区分する検査や診断が重要です。脳腫瘍や頭部外傷など別の病気が原因となっていることもあるため、顕著な多尿の症状が現れたら速やかに受診するとよいでしょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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