記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/29 記事改定日: 2019/10/25
記事改定回数:2回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
エプリースとは、歯茎にできる腫瘍=できもののことです。できる原因は様々ですが、この腫瘍は悪性化することがあるのでしょうか。
エプリースの基礎知識とあわせて解説していきます。
「エプーリス」とは、歯肉(歯ぐき)にできる良性のできもの(腫瘤:しゅりゅう)で、「歯肉腫」とも呼ばれます。
歯石や歯肉炎、歯に合っていない詰め物やかぶせ物、虫歯で歯根しか残っていないなど、歯肉周辺への慢性的な刺激や、歯肉の炎症によって起こります。
また、20~30歳代を中心に女性の発症率が高いことから、女性ホルモンとの関係性も指摘されています。なお、人数は少ないものの、先天性の場合は新生児でも発症します。
エプーリスは、表面は滑らかで痛みがないことが多く、進行は緩やかです。長い間、大きさがほとんど変わらないこともあります。
色や硬さ、形など症状のあらわれ方はさまざまありますが、最も多いのは上の前歯の歯間の歯肉にできるものです。大豆や小指ほどの大きさになり、触ったときに痛みや出血がみられる場合があります。
大きな腫瘤になると、歯の面から裏にかけて親指ほどにまで膨らみ、歯が傾いたり、離れて開いたりすることがあります。
一度なると再発しやすく、最悪の場合は歯を失うこともあります。
エプーリスは良性のできものなので、悪性のがんのように転移することはありません。全身に散らばることなく、できた場所にとどまって大きくなる限局性(げんきょくせい)のものです。
ただし、口腔がんなどで歯肉にエプーリスに似たがんができている可能性や、体の他の臓器のがんが転移して歯肉にエプーリスと似た形のがんを作っている可能性もあるので、歯肉など口内にできものがあるときは必ず歯科口腔外科を受診しましょう。
エプーリスの治療では、手術で腫瘤を切除するケースが多いです。
エプーリスの基底部から歯肉だけを切除する場合と、基底部にある骨、骨膜を含めて切除する場合があり、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)まで侵されて歯のぐらつきがひどい場合や、再発を繰り返す場合には、原因を除去するために抜歯が必要になることもあります。
多くの場合、歯肉や歯槽骨の一部を骨膜とともにすべて切り取り、悪い部分をかきだしていきます。エプーリスを取り除いて歯の面が出てきたような場合には、歯石をとり歯の根の部分を磨いて汚れをつきにくくします。
切除には出血がともないますが、最近では技術が進歩し、レーザーが治療に応用されるようになっています。
レーザー治療では止血しながらの切開が可能で、従来の方法に比べて痛みや不快感が少なく、傷の治りが早いというメリットがあります。
半導体レーザーのほか、歯を削ることができるエルビウムヤグレーザー、軟組織に適した炭酸ガスレーザーなどがあり、状態によって調整され使い分けられます。
エプーリスの主な原因は上でも述べた通り、歯肉に慢性的な刺激が加わり続けることです。
エプーリスを予防するには次のようなことに注意しましょう。
エプーリスに悪性のものはありませんが、放置すると腫瘤が大きなって抜歯しなければならなくなる可能性があります。また、悪性の病気がエプーリスのような形をとっていることもあり、それは切除して調べてみなければわかりません。もし、歯ぐきにコブのようなものが見つかったら、早めに病院で診てもらいましょう。