記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/16 記事改定日: 2019/3/7
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
中枢性尿崩症(CDI)とは、バソプレシン分泌低下症とも呼ばれる病気で、抗利尿ホルモンの異常で発症します。主症状は多尿と、多尿からくる口の渇き、多飲で原因疾患の治療が優先されますが、そのほかにどのような治療があるのでしょうか。
この記事では中枢性尿崩症(CDI)の治療薬について解説しています。
中枢性尿崩症とは腎臓内で水の再吸収を行う抗利尿ホルモンが欠乏することで薄い尿が作られるようになってしまう病気であり、その段階で、飲水で水分の補給ができなければ血液中のナトリウムが高まって高ナトリウム血症に陥ってしまいます。
バソプレシン分泌低下症ともいわれ、患者数は日本で4,000人から5,000人ほどとされています。
主症状は多尿と、それに伴う口渇、多飲で、脳腫瘍や外傷が原因で発症する続発性が約80~90%、遺伝によって発症する家族性が約1%、原因不明の突発性が約10~20%とされています。
中枢性尿崩症は一旦発症すると治癒することはあまりありません。
現在、中枢性尿崩症の治療薬には完治を目的とする薬はなく、足りないホルモンを補充しできるだけ通常に近い社会生活を送れるようにすることを目的に治療を行います。
中枢性尿崩症の治療薬には点鼻薬であるデスモプレシンと舌の下において内服する舌下錠といわれるミニリンメルト錠®が主に使われています。
両方とも、抗利尿ホルモンの受容体に作用して水と尿素の透過性を亢進させて体内への水の再吸収を促すため、尿量が減少し、口渇、多飲も改善されていきます。
また、続発性の中枢性尿崩症の場合は原疾患の治療を併行して進めていきます。
デスモプレシンのメリットは液体なので微量の調整が可能であるということです。そのため、1本の薬で量を調整しながら使用し続けることが可能です。
また、内服ではないため食事の影響を受けにくくいつでも使用できるという所もメリットとなります。
さらに投与後30分から2時間で効果が出現し、その効果は6~24時間ほど持続するということも特徴で、1度使用することで効果が長期間持続することもメリットとなります。
デメリットは鼻炎など鼻の疾患がある場合は効果が出にくいということです。また、点鼻用のチューブの操作が難しく、使用するたびにチューブを洗浄する必要もあります。
さらに、お薬は冷所保存であるため外出先への持ち出しが難しいというデメリットもあります。
ミニリンメルト®のメリットは水なしで簡単に内服できるというところです。また、常温保存で良いため外出時の持ち歩きも可能であることもポイントです。
さらに、ミニリンメルト®の方がデスモプレシンと比較して副作用がやや少ないというメリットもあります。
デメリットは、食後すぐに飲むと効果が出にくいことです。また、食後薬であるため食事の時間が不規則な場合や外食をした際などに飲み忘れる可能性もあります。
湿気や光に弱く、持ち歩いたことで薬が使用できなくなってしまうこともあります。
中枢性尿崩症では上記の薬剤が主に使用されますが、下垂体前葉機能低下症を合併した場合には、ヒドロコルチゾン(副腎皮質ホルモン)の投与を行います。
少量から開始して2~4週間かけて徐々に増量していきますが、脱水となる可能性が高くなるため、脱水に気をつける必要があります。
中枢性尿崩症は、何らかの病気によってバソプレシンの分泌が低下している場合を除いて完治することはほぼなく、生涯にわたって治療を続けていく必要があります。
一方、下垂体腺腫などの病気が原因の場合には、その病気の治療を行うことで尿崩症が改善することもあります。
予後は、適切な治療を続けていけば尿崩症自体で亡くなることはありません。投薬中は、薬の使用を忘れないことはもちろんのこと、むくみや動悸、息切れなどの症状に注意し、薬の効果が過剰にならないように注意する必要があります。
また、水分摂取量や尿量の状態も把握することが必要な場合もあります。
中枢性尿崩症の完治は難しいとされており、薬剤を使用することで日常生活を取り戻していくことが目標とされます。
そのため、薬を使用するということを習慣化し、治療を継続していくことが大切です。
薬の形状は全く異なる2種類があるため、医師に相談して自分のライフスタイルに合った薬を使用して継続していくことが生活の質(QOL)を高める上で重要になってくるでしょう。