記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
シェーグレン症候群とは、全身に「乾き」の症状が現れる自己免疫疾患です。特に顕著とされる症状が「目の乾き」であり、この症状が長く続くとQOL(生活の質)が著しく低下することもあります。この記事ではシェーグレン症候群の目の乾きの対処法や治療法について解説しています。
「シェ―グレン症候群」は代表的な自己免疫疾患のひとつで、本来は体内に入り込んだ外敵を攻撃する役割を持つ免疫系が何らかの理由で自分自身を攻撃してしまう病気です。国内で患っている人は10万人以上いるとされ、圧倒的に女性が多く、50歳代を中心に小児から高齢者まで幅広く発症します。
根本的な原因は不明ですが、遺伝的要因やウイルスなどの環境要因、免疫異常、女性ホルモンの要因などが複雑に関連し合って発症すると考えられています。涙の分泌を行う涙腺と唾液の分泌を行う唾液線が攻撃され機能しなくなるのが最大の特徴で、こうした症状のみあらわれる原発性シェ―グレン症候群と、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなど他の自己免疫疾患と一緒に発症する二次性シェ―グレン症候群の2つに大別されますが、症状には様々なものがあります。
症状はさまざまで、目が乾く(ドライアイ)、口が渇く(ドライマウス)のほか、周期的に両側にあらわれる関節痛、腟乾燥症、呼吸障害や呼吸器感染症、血管炎、腎臓障害などが起こります。全身が乾燥した状態になるというイメージです。
シェ―グレン症候群でもっとも重要な症状とされるのがドライアイです。涙が出なくなることから、目が疲れる、目やにが多い、ごろごろする、痛む、かゆい、かすむ、スムーズに目を動かしにくい、過度にまぶしい、朝に目が開けられないといったことが起こります。涙には、普通の状態での基礎分泌と悲しいときやゴミが目に入ったときの反射性分泌がありますが、シェ―グレン症候群では一般のドライアイにみられる基礎分泌障害だけでなく、反射性分泌も障害されてしまいます。これらの状態が続くと、ストレスなどから精神症状や身体症状もあらわれるようになります。
根本的な治療は確立されていないため、治療の中心は二次的疾患を予防しながら乾燥した状態に潤いを与え不快感を解消する対症療法となります。もっともよく用いられるのがヒアルロン酸を含む点眼薬、目の機能維持と保湿効果のあるビタミンAの点眼薬です。現在では、自己血清を薄めた人工涙液を用いた治療法も広がり始めています。また漢方薬も使われるケースもあり、ストレスを緩和する柴胡、眼に栄養を与える血を補う当帰、身体に潤いをもたらす麦門冬などが用いられます。
生活面では、乾燥を避けて必要に応じ加湿し、過剰な照明やタバコの煙、ホコリ、長時間のディスプレイの凝視なども避けるようにします。身体を積極的に動かすとともに、リラックスさせることも大切です。食事については、ほうれん草や春菊、人参、鶏レバー、豚肉、ウナギなどビタミンAを豊富に含むものや、脂が豊富な魚、ブルーベリーやラズベリーなどをとるようにしましょう。
シェ―グレン症候群の主症状である「目の乾き(ドライアイ)」は、一般のドライアイと異なり全身にまで波及していく可能性のあるものです。疲れ目として放置することなく、気になる症状があれば早めに受診しましょう。