糖尿病足病変になるのはなぜ? 治療・予防はできる?

2018/1/16 記事改定日: 2018/4/6
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病足病変は「足の血行が悪くなること、神経障害で感覚が鈍くなること、免疫が低下して感染しやすくなること」で発症するといわれています。重度になると壊疽(えそ)を発症し、足を切断しなければいけなくなってしまう場合もあります。
この記事で、糖尿病足病変の発症の原因と治療・予防法を見ていきましょう。

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糖尿病足病変になるのはなぜ? ~原因とメカニズム~

糖尿病足病変は糖尿病が比較的進行した患者にみられることが多く、中でも高齢の男性患者に多いといわれています。
糖尿病の病歴が10年から15年以上にもなると、足の神経が麻痺しはじめます。それによって末梢血流障害や動脈硬化が起こり、血液が行き届きにくくなることが原因で糖尿病足病変が起こります。また、高血糖状態が続いて免疫力が低下し、細菌に感染しやすくなることも原因のひとつです。

糖尿病足病変が怖いのは、細菌に感染しやすい状態にもかかわらず、神経が麻痺しているために、かなり進行するまで足の異常に気づきにくいところです。
しかも、血行が悪いので足に新たな栄養が行き届かずに治りにくいという特徴があります。

糖尿病足病変になると、どんな症状があらわれる?

糖尿病足病変によって生じる代表的な症状は以下の通りです。
重症化すると足を切断しなければならないような状態になってしまうので、疑わしい症状がみられたらできるだけ早い段階で治療を受けるようにしましょう。

〈1〉足の冷え、しびれetc

足の冷え、しびれ、急に足がつる、何も感じなくなる、靴擦れやタコなどのできものがみられるなどの症状がみられた場合は足病変の可能性が疑われます。

〈2〉足潰瘍(あしかいよう)

足潰瘍は皮膚が欠損した状態で、感染を合併すると周囲が赤くなって膿汁(うみ)が出てくる場合があります。

〈3〉足壊疽(あしえそ)

足壊疽は皮膚や皮下組織などが死滅して暗褐色や黒色に変色する病気で、重度の血流障害や細菌感染が原因となります。広範囲な壊疽や重症感染を合併した足潰瘍まで症状が進行すると、足を切断せざるをえなくなります。

糖尿病足病変は治療できる?

糖尿病足病変の治療の基本は起きた症状への対症療法です。
たとえば水虫や細菌に感染した場合は真菌薬や抗生物質により感染症の治療を行います。
また、傷や潰瘍があるところには体重をかけないように気を付け、細胞が死んでしまっている部分は傷口・潰瘍が治るのを妨げるため、該当部分を削る(デブリドマンといいます)などして、傷口が治るようを促します。
血糖コントロールが悪いと、感染が長引いたり傷が治りにくくなったりするため、治療と並行して厳格な血糖値の管理を行う必要があります。

また、血管が細いと傷や潰瘍の治りが悪いため、末梢動脈疾患の治療と同様に血管を広げる治療を行うこともあります。

〈状態が悪ければ切断することも・・・〉

足の組織が死滅してしまう壊疽(えそ)が広範囲にわたり、残念ながら治らないほど重篤な場合には、命を守るために足を切断しなければならない場合もあります。

糖尿病足病変の予防は靴やフットケアがポイント?!

長く糖尿病に悩まされている人は、自身の足の状態に人一倍気をつけることが大切です。「フットケア(足への配慮)」の意識を身につけましょう。

靴や靴下は、ご自分の足のサイズに合ったものを選ぶのが基本です。締め付けのきつい靴や靴下は、細菌繁殖の温床になります。
近ごろでは、糖尿病患者向けの専用靴も市販されています。糖尿病患者は、足病変によって足が変形しやすいので、靴底が余裕を持って深くつくられています。また、インソールを工夫することで足にぴったりで歩行に無理のない靴をつくることもできます。

〈フットケアは毎日行おう!〉

また、ご自分の足を常に観察する習慣を身につけ、清潔感を保つように心がけてください。これだけでも、感染症のリスクを抑えることにつながります。爪の中には細菌のたまり場ができやすいので、爪切りや爪ヤスリなどで、こまめに手入れをするようにしましょう。
ただし、タコなどのできものや、潰瘍、壊疽が気になるからといって、自分で取り除いて処置しようとしてはいけません。これらは細菌感染を広げて悪化させるおそれがあるため危険です。必ず医師の指示通りに治療を行いましょう。

〈カイロや湯たんぽなどによる低音やけどに注意〉

足の感覚が低下してしまった方は低温やけどを起こしやすいため、湯たんぽや電気毛布などを使用する際は注意し、就寝時には必ずスイッチを切ってください。
また、使い捨てカイロは皮膚に直接つけないようにしましょう。
上記のような電気器具を使ってはいけないこともあるので、使用前に医師に確認してください

おわりに:糖尿病足病変は予防が大切!足の状態をきちんとチェックしよう

糖尿病足病変は「免疫力低下」「神経障害」「血行障害」などの糖尿病の諸症状が連鎖して起きる、足の不具合の総称です。
糖尿病と足が深く関連しているのは意外かもしれませんが、糖尿病が進行すると、水虫ができやすくなったり、やけどになっても気づかずに重症化してしまうこともあります。
足病変は常に自分の足への注意を向けることで十分に防げるので、フットケアを継続して糖尿病足病変を予防しましょう。

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