記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
無痛性甲状腺炎とは、甲状腺の組織が壊れることで甲状腺ホルモンが血中に放出されてしまい、様々な症状が起こる病気です。バセドウ病との区別が重要とされている病気であり、再発しやすいともいわれています。下記でこの病気のことを詳しく解説していきましょう。
甲状腺は喉のあたりにある器官で、全身の細胞を活性化させる作用のある甲状腺ホルモンを出す内分泌器官です。
無痛性甲状腺炎とは、甲状腺を構成する組織が壊れ、中に保存されていた甲状腺ホルモンがいっぺんに血中へ浸み出てきたことで、全身の甲状腺ホルモンの血中濃度が一時的に上昇する症状です。
そのため、一種の「甲状腺ホルモン中毒」の症状となり、指の震えや発汗、動悸、息切れなどの症状が出てくることがあります。
無痛性甲状腺炎は、慢性甲状腺炎(橋本病)の症状として出るほか、出産を終えた女性にも起きることがあります(出産後甲状腺炎)。
無痛性甲状腺炎から1~2か月が経過すると、今度は反動で甲状腺ホルモンの濃度が一時的に低下します。甲状腺の壊れた組織や細胞が修復されている間、甲状腺ホルモンが作られなくなるからです。その後は症状が改善され、無痛性甲状腺炎は自然治癒することが多いといわれています。
無痛性甲状腺炎と同じように、血中の甲状腺ホルモン濃度が上昇する病気に、バセドウ病があります。バセドウ病患者の甲状腺では、組織が壊れているわけではなく、甲状腺刺激ホルモンを受け取る受容体(TSHレセプター)が過剰に刺激されることによって、甲状腺ホルモンが大量に分泌されていると考えられています。
バセドウ病は適切な治療が必要ですが、無痛性甲状腺炎ではむしろ余計な治療を施さず、経過観察が望ましいとされるケースが多いといわれています。つまり両者は正確に区別する必要があるのです。
無痛性甲状腺炎とバセドウ病を区別するには、甲状腺がヨード(ヨウ素)を取り込むかどうかを調べます。
ヨードは甲状腺ホルモンの原料になるので、甲状腺ホルモンがいっぺんに血中へ出て行けば、甲状腺はヨード不足の状態になります。
しかしバセドウ病の人の甲状腺はヨードを積極的に取り込みますが、無痛性甲状腺炎にかかった人の甲状腺は組織が破壊されている状態のためヨードを取り込めなくなってしまうのです。
無痛性甲状腺炎は、積極的な治療がほとんど必要ありません。一時的に甲状腺ホルモンが低下した状態になった後、数か月で自然治癒します。ただし、治癒せずに甲状腺ホルモン低下症になる可能性もあります。その場合は甲状腺ホルモン剤を服用して補充します。
無痛性甲状腺炎は、一度治っても再発する可能性が高いため、定期的な検査が推奨されます。
無痛性甲状腺炎は、一時的に多量の甲状腺ホルモンが血液の中へなだれこむため、指の震えや多汗、動悸、体重減少などの症状が出ます。とはいえ、数か月で自然に治ることが多いです。そのため油断しがちですが、無痛性甲状腺炎は再発する可能性が高い症状でもあります。少なくとも年に1度のペースでは、医師の診察を受けるようにしましょう。