記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/1/22
記事監修医師
前田 裕斗 先生
母子感染とは、母体から子供へ感染が拡がることをいいます。妊娠中、出産時、授乳時に感染し、感染する病気は様々あります。この記事では、母子感染の可能性が高い感染症を紹介しています。妊娠の予定がある人は参考にしてください。
母子感染とは、妊娠した女性が持っている病気や病原体が、子供にも感染してしまうことです。
母子感染の形態には、次の3種類があります。
・胎内感染・・・ 子宮内にいる胎児が、妊娠中の母親のヘソの緒などを通じて、病原体に感染することです。
・産道感染・・・ 胎児が産まれる直前、外へ出ようとして産道を通っているときに、母親の粘膜などを通じて細菌やウイルスなどに感染することです。
・母乳感染・・・ 母親の母乳に病原体が含まれているとき、それを飲んだ赤ちゃんが感染することです。
風疹は、ウイルスによって身体じゅうに発疹(ぶつぶつ)ができる病気で、ほかに発熱やリンパ節の腫れなどの症状が出ます。
もし、妊婦が妊娠中に初めて風疹ウイルスに感染した場合は胎児にも胎内感染するおそれがあり、先天性風疹症候群(心疾患・聴力障害・視力障害など)を持って生まれてくる可能性があります。
現在は風疹ワクチンを接種して母子感染を防ぐこともできます。ただし、妊娠中にはワクチン接種ができませんので、妊娠の予定がある場合は計画的に摂取し、胎児への感染予防にも備えておきましょう。
いずれもウイルスによる感染症です。
母子感染によって、赤ちゃんにB型・C型肝炎ウイルスがうつったとしても、新生児期にはほとんど症状が出てきません。しかし、成長後に、肝炎や肝硬変、肝癌になるリスクが高くなります。まれに、乳児の段階で重篤な肝炎を引き起こすことがあります。
ウイルス性の白血病で、一度感染すると一生涯、ウイルスを体内に保有し続けることになります。ただし、すべてのウイルス保有者(キャリア)が白血病になるわけではありません。
赤ちゃんに感染した場合、一部の人が将来、ATLと呼ばれる白血病を罹患するリスクがあります。
物々しい名称ですが、我々が日常的に有している可能性のある細菌です。抵抗力を持っている成人が発症しても症状は軽いですが、生まれてこようとしてくる胎児がGBSに産道感染すると、肺炎や髄膜炎、敗血症などの重篤な感染症を引き起こすおそれがあります。
新生児がGBSによる敗血症になった場合進行が非常に早く、死亡率も高いことから妊娠後期で必ずおりものの検査をする必要があります。
赤ちゃんにHIVが感染しても、しばらくは無症状ですが、やがてエイズ(後天性免疫不全症候群)を発症するおそれがあります。身体の抵抗力が非常に弱まり、通常では感染することがないような重篤な感染症に次々とかかってしまいます。
まずは妊娠の前後で抗体検査を受けて、母子感染のリスクを把握し、必要に応じてワクチンを接種しておくことが必要です。
感染症予防で基本となる手洗いや、性交渉時のコンドーム着用など、普段からできることをしておくのが大切と言えるでしょう。
上記で紹介したもの以外にも、梅毒やクラミジアなどの性感染症、サイトメガロウイルス、ヒトパルボウイルスB19、リステリアなども母子感染のおそれがあります。
また、麻疹(はしか)が母子感染すると、流産や早産を引き起こすことがあります。妊娠前後の抗体検査はもちろんですが、妊娠の予定がある人は必要なワクチンは接種しておくようにしましょう。