記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/17
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
“いじめ”もしくは“いじめのようなもの”を経験しないで成長した人はいないと言っていいほどです。いじめは受けた人の「精神的・物理的苦痛」です。なぜいじめがなくならないかを考えることが、いじめ軽減の一歩になるでしょう。
子どもたちがスマートフォンをもち、インターネットを簡単に使う現在は、ネットやSNSがいじめの現場になっています。面と向かって暴力をふるうのではなく、ことばと画像の暴力でいじめ状態をつくっています。ネットのグループ上に勝手に写真をアップされ、みんながことばを投げちらす。他のグループにまで、拡散させる。今までには考えられなかった手法で、「いじめられる者」の烙印が、これでもかと押されていくのです。
社会生活が多様化した現在でも、日本人のDNAには他者と異なることを受け入れにくい気質があるのかもしれません。何世代も前の人たちが、みんな同じが平和で安心、と思ってきたような。しかし現在は、肌の色から家族構成、性的傾向、障害など、違いをもつ子どもたちが互いを認め合い、のびのびと生きていける社会のはずです。
グループの中では、突出することはいけないこととされています。目立つ子どもは、それだけが原因でいじめの対象にされます。ただ太っているだけでも、地方なまりがあるだけでも、ターゲットにされることがあります。
昨日まで同じグループだったのに、急にいじめのターゲットとされてしまう場合があります。何の理由もなくターゲットにされてしまうのです。思春期の子どもたちは、理由もなくいらだっています。成長の急激な変化にとまどい、解消法がわからず、いじめがいわばうっぷん晴らしになっています。
息をこらしてひたすら目立たないように過ごしている子どもたちがたくさんいます。いじめられている子どもに気がついたら、本人は決して悪くない、と大人は伝える必要があります。
いじめている加害者が自分の子どもの場合があります。この場合も、子どもは決してよいと思っていじめている訳ではありません。大人がシグナルに気づいて、手を差し伸べることがいじめをやめるきっかけになるでしょう。
いじめられた子どもは、自信を失い、不安と恐怖の時間を過ごします。悲しみや孤独が不登校や成績低下につながります。自傷行為やうつ病、自殺願望をもつ子どもも出てきます。
子どもの頃にいじめにあった人は、大人になっても環境に適応しにくかったり、精神的な問題を抱えることが多いというデータもあります。
いじめは卑劣で醜い行為です。どんな理由があっても、いじめる理由にはならないはずです。そして大人は、いじめられた者に、決してひとりで抱え込まないように、ひとりで解決しようと思わないように、伝えてください。