無症状でも放置すると危険! 根尖性歯周炎はすぐに治療しよう

2018/2/2

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科

川俣 綾 先生

根尖性歯周炎とは、歯槽骨(歯が埋まっている骨)にまで細菌感染が拡がっている歯周炎のことです。無症状のまま進行することもあり、副鼻腔炎などの口腔以外の病気を引き起こすおそれもあるので注意が必要です。この記事では、根尖性歯周炎のリスクと治療方法について解説しています。

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根尖性(こんせんせい)歯周炎とは?

根尖性歯周炎は、細菌感染が歯の根尖部にまで浸透して歯槽骨にまで達し炎症を起こすことです。歯槽骨とは、歯を支えている部分の骨になります。

根尖性歯周炎は虫歯から生じる歯の疾患です。
虫歯は口の中の細菌に感染して歯質がやわらかくなり、歯の実質が欠損することですが、虫歯が進行すると、細菌感染は歯髄にまで広がります(歯髄炎)。歯髄には、歯の神経や血管が含まれています。

歯髄炎が進行すると、歯髄と共に、神経や血管も死んでしまいます(歯髄壊死)。
歯の血管が死ぬと、血液が流れなくなります。血流が絶えると、免疫機能を担っている白血球が働かなくなるので、歯の根の中で細菌が繁殖しても、硬い歯の組織に囲まれているうえに白血球が働かないので、細菌を歯の根の外に排出することができません。
その結果、細菌は、歯髄腔から歯の根の中で繁殖します。細菌や細菌の産生する毒素が歯根の先から歯根膜・歯槽骨にまで到達して、歯の根の周囲の組織に炎症をもたらし根尖性歯周炎が発症します。

根尖性歯周炎を放置した場合のリスクについて

根尖性歯周炎を放置すると、痛みがなくても骨がどんどん溶けていき、骨をつきやぶって歯肉に穴が開いて、膿が出てくるため、早期の治療が必要です。
さらに、上顎の根尖性歯周炎が進行すると、副鼻腔が細菌感染を起こし、副鼻腔炎を発症することがあります。一方、免疫力が落ちている状態で下顎の根尖性歯周炎が進行すると、骨髄炎になることがあります。この場合、激痛と共に、悪寒、高熱を発し、すぐに入院して治療を受ける必要があります。また根尖性歯周炎が進行して、細菌が血液中に侵入すると、血流に乗って全身を巡ります。血液が感染を起こすと、敗血症を発症するおそれもあります。

根尖性歯周炎はどうやって治療するの?

まず細菌が感染している歯の部分を削り、健康な部分だけを残します。その際、ラバーダムというゴムのシートを治療している歯に付け、唾液による汚染を防ぎます。次に、根の中の感染している部分をファイルという針金できれいに削り落とします(根管治療)。そして再度感染しないよう、圧力をかけながら薬を詰め、セラミックなどの劣化の少ない材料で被せ物をします。

ただし、根尖性歯周炎が長期化してしまった場合、歯の根の治療では治らない場合もあります。その場合は歯茎の方から切開し、根の先に溜まった膿を出す歯根端切除術を行います。
歯を残すことが出来ないほど虫歯の進行がひどい場合には、抜歯をします。

おわりに:定期健診で虫歯の進行を食い止めることが重要!

根尖性歯周炎は、無症状のままに進行することが多い疾患ですが、放置しておくと副鼻腔炎や骨髄炎などを引き起こし、敗血症など重篤な病気を招くおそれもあります。虫歯を防ぐことが根尖性歯周炎の第一の予防策ですが、定期的な健診を受けて症状が深刻化する前の発見と治療に努めましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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