記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/23 記事改定日: 2020/7/2
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
甲状腺ホルモンは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の刺激を受けて分泌されるものです。何らかの原因で、甲状腺刺激ホルモンの分泌量が高くなってしまうことがあります。どのような場合に分泌量が高くなるのか、高くなるとどんな症状がみられるかを解説します。
甲状腺ホルモンは、のどぼとけの下方にある甲状腺から分泌され、血液によって全身に運ばれ新陳代謝を活発にします。血中の甲状腺ホルモンが不足すると、まず脳にある視床下部から甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が放出されます。このTRHが下垂体を刺激すると、甲状腺刺激ホルモン(TSH)が放出されます。そして、TSHが甲状腺を刺激すると、甲状腺ホルモンが分泌されるのです。
甲状腺ホルモンは、全身の細胞に作用して新陳代謝を活性化する働きがあります。これは、飲食物として取り入れられた栄養素が身体を動かすのに必要なエネルギーになるのを助けて基礎代謝をアップさせ、体温を上昇させたり、心臓や消化管の働きを活性化させたりする作用も担います。
また、甲状腺ホルモンは自律神経の一つである交感神経を刺激する働きもあります。交感神経は、簡単に言えば身体の機能を活発にする神経。この交感神経が刺激されることで動悸や手の震え、興奮感が生じるようになることもあります。
一方、胎児や小児においては、骨や神経、精神の発達にも大きく関わり、甲状腺ホルモンが不足すると発達の遅れや異常を来すようになります。
血中の甲状腺ホルモンが増え過ぎると、視床下部や下垂体に伝わってTRHやTSHの放出が抑制され、甲状腺ホルモンの分泌が抑えられます。
甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても代謝機能が乱れ、身体にさまざまな症状があらわれるため、甲状腺疾患の検査では甲状腺刺激ホルモンの数値が重要になります。
基本的に甲状腺ホルモンの分泌量が十分であれば、甲状腺刺激ホルモンが分泌されることはありません。ただし何らかの原因で甲状腺刺激ホルモンの分泌量が異常に高くなることがあります。
甲状腺ホルモンの数値は正常なのに甲状腺刺激ホルモンの数値が高い場合、潜在性甲状腺機能低下症になっている恐れがあります。これは甲状腺機能低下症を発症する前段階の症状で、橋本病(慢性甲状腺炎)が主な原因になっているといわれています。
自己免疫による攻撃で甲状腺に慢性の炎症が起こり、その症状が進むと甲状腺の腫れといった機能が低下します。
甲状腺刺激ホルモンの数値だけが高くなると、下記のような自覚症状があらわれます。
この症状から甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症へと進むことがあります。
甲状腺機能低下症を発症すると、代謝が衰えたり、気力が失われて常に全身がだるくなったりします。身体も冷えやすく、食事量は変わらないのに太ってしまうこともあります。集中力の低下やうつ状態に陥ることもあるため、更年期に差し掛かる頃に発症した場合、更年期障害と思い込んで甲状腺機能低下症であることに気付きにくくなることもあります。
シックハウス症候群やアレルギーを含む化学物質過敏症は、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症を誘発したり、悪化させたりすることがあると考えられているため、日常生活での対策が重要です。
シックハウス症候群で顕著にみられるのは、新築住宅の建材や壁紙などから発散される化学物質による症状ですが、床にかけたワックスや殺虫剤、芳香剤なども原因となることがあります。
対策の中でも特に換気は重要です。新築時はもちろん、リフォーム後も入居前に換気を徹底しましょう。また、新品の大型家具を購入したり、カーテンやカーペットを新調した直後も要注意です。
化学物質過敏症は、いったん発症するとさまざまな化学物質に過敏に反応するようになるといわれています。このため、十分な対策をして発症を防ぐことが大切です。
甲状腺刺激ホルモンは甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの分泌を促すものです。代謝を維持する上で大切なホルモンですが、必要以上に分泌されてしまうと甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。これまで経験したことがないほどの倦怠感やむくみ、集中力の低下などが続くときは、念のため病院で検査を受けましょう。