記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/8 記事改定日: 2019/7/5
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「メタボ」という名称でも知られる「メタボリックシンドローム」は、男女ともに中高年以降で発症率が上がる傾向にあります。
今回の記事では、このメタボリックシンドロームの発症原因や、健康上のリスクについて解説していきます。
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に加え「高血圧」「高血糖」「脂質代謝異常」が組み合わさり、心臓病や脳卒中といった動脈硬化性疾患を引き起こしやすい病態です。
厚生労働省では、ウエスト周囲径が男性は85cm以上、女性は90cm以上で、高血圧・高血糖・脂質代謝異常の3つのうち2つに当てはまることを基準としています。
メタボリックシンドロームの原因は、暴飲暴食や運動不足などによる「内臓脂肪」の蓄積です。
脂肪には蓄積している場所によって「皮下脂肪」「内臓脂肪」などの呼び名がありますが、内臓脂肪は消化管で吸収された栄養素を肝臓に運ぶ血管の周辺にある脂肪の総称になります。
近年では、肝臓などの臓器や筋肉など、皮下脂肪や内臓脂肪ができるところ以外にも脂肪が蓄積するということがわかってきていて、この脂肪のことを「異所性脂肪」と呼びます。
異所性脂肪は内臓脂肪と同様にメタボリックシンドロームの原因になると考えられています。
なお、30~50歳代の男性や50歳代以降の女性は、肝臓に異所性脂肪がつく脂肪肝の発症率が高くなるので注意が必要です。
メタボリックシンドロームの原因になる内臓脂肪や異所性脂肪は、食べ過ぎによるカロリーの過剰摂取や運動不足が主な原因ですが、夜遅くの食事にはとくに注意が必要です。
夜遅い時間に食事を食べると太りやすくなるのは、脂肪細胞から分泌される食欲抑制やエネルギー代謝亢進の働きがある「レプチン」の作用が低下してしまうことが原因と考えられています。
メタボリックシンドロームが進行すると、内臓脂肪がどんどん蓄積されていきます。すると蓄積された内臓脂肪から脂質が大量に放出され、中性脂肪が増加したり、動脈硬化を防ぐ善玉のHDLコレステロールが少なくなってしまい、結果的に動脈硬化の危険性が高まります。
なお、内臓脂肪は合成と分解が皮下脂肪よりも盛んに行われているという特徴があり、内臓脂肪は増えるとすぐに血液中に放出されます。そのため、内臓脂肪が多い人は血液中の脂質が増加しやすいです。
血液中の脂質が増えると中性脂肪も増えやすくなり、善玉のHDLコレステロールが減少しやすくなります。この状態を脂質異常症(高脂血症)といい、動脈硬化が進んでしまう原因となります。
動脈硬化は狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(心臓病)のリスクを高めます。
メタボリックシンドロームが進行すると、糖尿病になりやすいということがわかっています。その直接的な原因は、脂質代謝や糖代謝を円滑にする働きがあるアディポサイトカインの分泌異常です。
アディポサイトカインにはいくつかの物質がありますが、糖尿病の発症に関連する物質としては、傷ついた血管壁を修復して動脈硬化を予防しインスリンの働きを高める作用がある「アディポネクチン」、インスリンの働きを妨げる「TNF-α」があります。
内臓脂肪が増えると、アディポネクチンなどの物質の分泌が減少し、TNF-αなどの不都合な物質の分泌が増えることから、糖尿病の発症リスクが高まる可能性があると考えられているのです。
メタボリックシンドロームを予防・改善するには、次のようなことに注意しましょう。
メタボリックシンドロームの根本ともいえる肥満は、食生活の乱れによって引き起こされます。
食事は身長(体格)や普段の活動量に見合った適正カロリーを厳守し、野菜を中心とした栄養バランスのすぐれたメニューを摂るように心がけましょう。
また、脂っこいものや塩分・糖分の高いものは脂質代謝異常症や高血圧、糖尿病などの原因にもなりますので、食材の調理方法や味付けにも注意し、ヘルシーな和食を中心とした食事を摂ることも大切です。
適度な運動は肥満の予防・改善につながるだけでなく、内臓脂肪を減少させたり、インスリンの働きを促進することで糖尿病を防ぎます。
メタボリックシンドロームの予防・改善には、脂肪の燃焼効果が高いウォーキングや軽めのジョギング、水泳などの有酸素運動をしましょう。
1日30分程度の運動を週に2~3回程度の頻度で行い、徐々に運動の頻度や時間を増やしていってください。「自分ができる範囲を少しずつ増やしていく」ことが長続きのコツです。
ストレスや睡眠不足、疲れ、喫煙などは高血圧や糖尿病の要因であり、結果としてメタボリックシンドロームを引き起こすリスクも高くなります。
日頃から十分な睡眠や休息時間を確保して、ストレスが溜まりにくい生活を心がけましょう。
また、タバコはがん発症のリスクも高まるなど健康によいことは何一つありません。喫煙習慣のある人は禁煙を始めましょう。自分の意志だけで禁煙するのが困難な場合には、禁煙外来などで禁煙補助薬を処方してもらうのもおすすめです。
メタボリックシンドロームは、糖尿病などの生活習慣病や心筋梗塞などのリスクが高いです。原因となる内臓脂肪や異所性脂肪を徐々に減らしていけるように、夜食は控え、バランスの良い食生活と運動習慣を心がけましょう。