記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/31 記事改定日: 2020/3/2
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
原発性胆汁性胆管炎は、もともと原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていた病気です。自覚症状がみられないこともある病気ですが、進行すると黄疸や肝硬変を引き起こすこともあります。この記事では、原発性胆汁性胆管炎の治療法について解説します。
原発性胆汁性胆管炎は、胆管が徐々に破壊されて胆汁の流れが悪くなり、肝臓の中に胆汁が溜まってしまう病気です。
原発性胆汁性胆管炎は、かつては肝硬変になって初めて診断されることが多かったため、原発性胆汁性肝硬変と呼ばれていました。しかし、現在は肝硬変になる前に診断され、治療を始める人が多くなっているため、現在の病名に変わりました。実際に、早期治療のおかげで肝硬変まで進行せずに過ごしている人もたくさんいます。
胆汁がうっ帯することによる皮膚のかゆみや黄疸の症状、脂質異常症に関係する皮膚の黄色腫や肝腫大、カルシウムとビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症が起こることがあります。
しかし、原発性胆汁性胆管炎と診断される人のうち、3分の2には症状があらわれず、健康診断などで初めて発覚します。
原発性胆汁性胆管炎は、症状が出ていない段階の場合は比較的予後が良いとされています。しかし、発症から5年を経過すると20~30%の人に症状がみられるようになり、黄疸があらわれる段階にまで進行すると、治療を始めても病状の進行を食い止めることが難しく、かつ、予後が悪い状態になってしまう可能性があります。ここまで進行すると命に危険が及ぶこともあるため、できる限り早めに治療を開始することが大切です。
原発性胆汁性胆管炎を根本的に治す方法は、現在のところ確立していません。
そのため、治療は病気によって現れる症状を改善する対症療法や病気の進行を抑えるための治療が主体となります。
具体的には、胆汁の流れを改善する「ウルソデオキシコール酸」と呼ばれる薬剤の内服を続けていきます。
この治療を続けることで大半は病気の進行を抑えることができるとされていますが、肝硬変などに進行した場合は残念ながら根治させる治療法はなく「肝移植」が必要です。また、肝硬変は食道静脈瘤や腹水貯留などの合併症を引き起こすため、それらの管理も必要となります。
そのほか、原発性胆汁性胆管炎は皮膚のかゆみを生じることが多く、ひどい場合はかゆみを抑える抗ヒスタミン薬などが使用されることもあります。
原発性胆汁性胆管炎を発症したとしても、適切な経過観察と治療を続けていけば日常生活の制限が必要になることはまずありません。仕事や運動なども通常通り続けられます。ただし、肝臓に負担がかかるアルコールなどは控え、脂肪肝を防ぐため食生活や運動習慣を整えていく必要があります。治療を自己中断することなく、必ず医師の指示に従って検査や治療を続けていきましょう。
肝硬変に進行した場合は、食事や運動などをより厳密に管理していく必要があります。
原発性胆汁性胆管炎は早期に治療すれば、病状の悪化を予防したり、進行を遅らせることができます。重症化して治療ができなくなってしまわないうちに対処することが大切です。定期検診などを怠らず、異常があるときは早めに専門医を受診しましょう。