梅毒の症状の特徴と感染の兆候 ― 早期発見のためのチェックリスト

2018/1/24 記事改定日: 2018/7/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

梅毒は性病(性感染症)のひとつです。現在は完治可能な病気とされていますが、治療が遅れてしまうと治療期間が長引くだけでなく、知らずに周囲に感染を拡大させてしまう危険があります。梅毒の症状がどのように経過するかを解説していくので、早期治療に役立ててください。

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梅毒の特徴と感染経路

「梅毒」は、治療薬であるペニシリンが発見されるまでは不治の病として恐れられた性病(性感染症)です。梅毒トレポネーマという細菌が皮膚や粘膜の小さな傷から侵入し、血液中に入って全身に広がります。

あらゆる性行為(セックス、アナルセックス、オーラルセックスなど)で感染し、口に病変がある場合にはキスでも感染します。

昔の病気と思われていた性病ですが現在患者数が急増しており、特にこれまで少なかった20代の女性が増えているといわれています。
梅毒は早期治療で完治する病気で母子感染による先天梅毒も現在はほとんどなくなっていますが、梅毒に感染しているとHIV(エイズウイルス)にも感染しやすくなるため楽観的に考えることは危険です。

梅毒の症状や感染リスクをチェックしてみよう

梅毒の感染が疑われる症状や行動には次のようなものが挙げられます。

  • 性器に硬い小豆大のイボができる
  • 脚の付け根のリンパ節が腫れている

これらの初期症状は数週間で自然に改善することが多く、痛みやかゆみなどの不快症状を引き起こさないため、この段階で病院を受診する人は少ないのが現状です。しかし、体の中では梅毒は徐々に進行し、第2期に進行してしまうことになるのです。

特に女性の場合は、性器を自分でじっくり観察することができないため、イボができているのに気付かない人もいます。
次のような梅毒感染のリスクが高い人は、定期的に自分の性器にイボができていないかチェックするようにしましょう。

  • 不特定多数との性交渉がある
  • 自身やパートナーが性感染症と診断されたことがある
  • 性産業に従事した、利用している
  • 海外の渡航先で現地の人と性交渉を持った

梅毒の症状はどのように経過していくのか?

梅毒には「無症状」の期間がある!?

無症状の長い潜伏期間は梅毒特有のもので、自覚のないまま感染を広げてしまう可能性があり、セックスなどで感染した日から3週間ほど(10~90日)は潜伏期であり、無症状です。その後最初の症状が出ますが、無治療でも数週間で消えてしまいます。

3ヶ月ほど(最初の発症後4~10週)経って次の症状がでるまでは再び無症状となり、次の症状も無治療で数週間から数ヶ月で消えます。これらの初期症状が消えると今度は「潜伏梅毒」という潜伏期に入ってしまいます。無治療で3年以上経過しても7割は無症状のままで、約3割がゴム腫、心血管症状、神経症状などを起こす晩期梅毒に移行します。

第1期から第2期(初期から中期)の症状

梅毒は大きく4期に分かれます。感染して3週間から3カ月の期間を第1期梅毒といい、感染したところの皮膚や粘膜に5mm~2cm程の硬めのしこりができて潰瘍となりますが、痛みやかゆみなどはほとんどありません。できやすい場所は男性では亀頭と陰茎体の境や包皮、亀頭部であり、女性では大小陰唇、子宮頸部に発症しやすいといわれています。その後、少し遅れて太ももの付け根に無痛の腫れがでますが、これらの大半は2~3週間で消えます。

感染して3カ月から3年の期間が第2期梅毒です。原因細菌が全身に広がり、ピンク色の丸いあざや赤茶色のブツブツが体の中心線を中心に顔や手足にあらわれ、脱毛症状などもあらわれます。全身症状、泌尿器系や中枢神経系、筋骨格系の症状がみられる場合もあります。

第3期から第4期(末期または晩期)の症状

感染してから3年以上の期間が第3期梅毒であり、さらにそのまま10年以上経過したものが第4期梅毒です。
第3期に移行すると、皮膚や筋肉などにゴム腫と呼ばれるブヨブヨとした腫瘍が現れています。頭皮や顔、上半身、足などにできやすく、肝臓や骨など体の内部に形成されることもあります。ゴム腫は潰瘍を形成することもあり、このような状態になると強い痛みを伴うことが多いとされています。

一方、第4期は脳や脊髄などの神経系に浸潤したり、心臓や大動脈などの重要な臓器に腫瘍を形成するようになります。その結果、麻痺や認知症様の症状が現れ、錯乱や混乱状態など精神状態にも異常を来たします。そして、感染して20~30年ほどが経過すると、脊髄の働きが失われ、最終的には死に至ります。
しかし、これらの末期や晩期の梅毒は抗生物質が開発されてからほとんど見ることはなく、日本でこれらの症状がある患者はまずいません。

男女ともに初期の段階で検査・治療することが重要

男女とも注意深く観察すれば第1期梅毒の潰瘍を発見できることがありますが、痛みもかゆみもなく気づかないことが多いといわれています。手のひらや足の裏の赤色斑は第2期梅毒の特徴的な発疹で、そのほか体幹や手足・顔面にもあらわれます。

このときに無治療でやり過ごしてしまうと潜伏期に入ってしまい、自覚症状から梅毒を疑うことは難しくなってしまいます。女性の場合は特に無症状であっても母体から胎児に感染する可能性があります。梅毒は早期治療で完治する病気です。男女とも、少なくとも発疹の自覚症状が現れたら、梅毒を疑い検査を受けるようにしましょう。

おわりに:梅毒は完治できる病気。「感染したかも」と思ったら、まずは検査を受けましょう

日本の梅毒患者数は近年増加の一途をたどっています。梅毒は無症状なことも多く、さまざまな経路で気づかれないまま感染を広げていきます。心当たりがある、第1期、第2期の初期症状があるといった場合には、「気づくチャンス」を逃さずに自分自身で感染を疑い検査を受けるようにしましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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