睡眠時無呼吸症候群の原因と合併症。早期発見でリスク回避を!

2018/1/26

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

睡眠時無呼吸候群(SAS)とは、睡眠時に一定時間連続して呼吸が止まってしまうことです。昼間活動しているときに眠気に襲われたり、ひどい倦怠感が現れることもあります。この記事では、SASの原因と合併症のリスク、自分がSASかどうかを確認する方法を説明します。
早期発見・早期治療に役立ててください。

睡眠時無呼吸候群(SAS)はどんな病気?

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に10秒以上呼吸の止まる無呼吸あるいはもう少しで止まりそうな低呼吸を1時間に5回以上繰り返し、日中に眠気や倦怠感などの症状を伴うことをいいます。
近年では1時間あたりの平均の無呼吸と低呼吸の回数を指す無呼吸・低呼吸指数が15以上であった場合は、症状が無くても睡眠時無呼吸症候群と診断されることもあります。

睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と中枢性睡眠時無呼吸症候群の2つに分類することができます。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は上気道が閉塞して気流が停止することによって無呼吸となり、胸郭と腹壁の運動は見られるが通常の呼吸とは逆の運動が見られます。
一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群とは呼吸中枢の異常により呼吸そのものが停止して無呼吸となる状態を指します。

睡眠時無呼吸候群(SAS)発症の原因とは?

睡眠時無呼吸症候群は閉塞性と中枢性にわかれますが、それぞれ原因が異なります。
まず、閉塞性は、肥満や扁桃の肥大によって首や喉の空気の通り道に十分なスペースがなくなったり、舌が大きく寝た状態になると舌の付け根が喉を塞ぐことなどが挙げられます。他にも、小顎症や鼻中隔湾曲症などの生まれつきの解剖学的異常によるものも考えられます。

一方、中枢性の場合は、脳の中で呼吸を司る脳幹という部分に異常が生じることが原因となります。他にも、がん患者などへの痛み止めとして使用される医療用麻薬の副作用として中枢性無呼吸症候群が生じることもあります。

メカニズム

睡眠時無呼吸症候群がおこるメカニズムを閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を例に紹介しましょう。閉塞性睡眠時無呼吸症候群はこのメカニズムによって機能的因子と器質的因子に分類されます。

普段我々が仰向けに寝ている間に呼吸ができているのは、筋肉の収縮活動によって気道拡張筋の緊張圧と吸気時の上気道内腔陰圧のバランスが維持されているため、上気道が開き、呼吸ができるのです。しかし、飲酒、睡眠薬の内服、疲労などは筋緊張を低下させてしまいます。

これによって咽頭腔の外側に向かう力が弱くなったり、あるいは咽頭腔の内側に向かう力が強くなった場合、上気道が狭くなり閉塞性睡眠時無呼吸症候群になります。これを機能的因子と言います。

一方、肥満の場合は上気道の軟部組織への脂肪が沈着し、睡眠中に仰向けや頸部前屈位になると上気道が閉塞しやすくなります。これを器質的因子と言います。

睡眠時無呼吸候群(SAS)の合併症 ― SASが寿命を縮める原因に?

睡眠時無呼吸症候群はさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
その合併症をまとめました。

高血圧

二次性高血圧の原因疾患の1つとされています。夜間高血圧、早朝高血圧、心拍数増加を伴う高血圧などが特徴です。

多血症

無呼吸に伴う胸腔内圧の著しい低下によって心臓への負荷がかかり循環血液量が低下すること、夜間低酸素血症に伴うエリスロポエチンの産生亢進によって起こると考えられています。

不整脈

反復する無呼吸と呼吸再開、低酸素血症などによって急激な自律神経緊張の変動をした結果、不整脈を起こしやすくなります。

虚血性心疾患

健康な人と比較した場合、睡眠時無呼吸症候群の虚血性心疾患の発症リスクは1.2~6.9倍と報告されており、予後決定因子としても重要視されています。

脳血管障害

近年の研究により睡眠時無呼吸症候群は脳血管障害の発症リスクにつながり、健常人と比べて4倍高くなるという報告があります。

精神疾患

睡眠が分断されて睡眠の質が低下することから抑うつ状態、性格変化、過眠などを来します。特に抑うつ状態の合併頻度が高くなります。

運転中のトラブルにも注意!

睡眠時無呼吸症候群の問題は合併症以外にもあります。
日常生活において日中の眠気が増してしまうため、日中思い通りに生活できない、仕事の能率が低下する、知的能力が低下する、記憶障害を起こす、注意散漫となるなどの状態になります。特に自動車運転などでは運転中に眠気を催し交通事故を起こす、労働災害を来すということが社会的な問題にもなっています。

早期治療が重要!自分で気づくためにボイスレコーダーでチェックを!

睡眠時無呼吸症候群は良質な睡眠を妨げ、日中の眠気や倦怠感、集中力の欠如などの症状を来たし、社会生活に支障を生じることが多くなります。また、無意識のうちに居眠りをすることがあり、思わぬ事故を起こすこともあります。さらに、睡眠時無呼吸症候群を承知しておくと、心臓に過度な負担がかかることで心不全や心房細動などのリスクが上がり、高血圧になりやすいといわれています。

このように、睡眠時無呼吸症候群は、ただ単に「いびきがうるさい」だけでなく、社会生活や健康面に多大な影響を与えるものです。自分では中々気づきにくいものですが、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすい体形の人などは、睡眠時に呼吸が止まっていないか家族にチェックしてもらったり、ボイスレコーダーやビデオカメラで睡眠時の様子をチェックしてみましょう。

CPAP治療

睡眠時無呼吸症候群の治療の中に、CPAP治療というものがあります。
これは、持続陽圧呼吸療法とよばれるもので、睡眠時にマスクを装着し、そのマスクが気道に高い圧の空気を送ることで狭くなった気道に空気が通りやすくするというものです。

治療効果は非常に高く、日中の眠気に悩まされていた人の多くはCPAP治療によって改善するといわれています。しかし、扁桃肥大や小顎症のような解剖学的な異常が重度である場合は、CPAP治療では改善せず、手術が必要になることもあります。

CPAP治療を行うには、医師が睡眠時無呼吸症候群と診断を下し、機械の貸し出しを受けなければなりません。検査は終夜睡眠ポリソムノグラフィー検査が行われます。これは、病院に一泊し、睡眠時の脳波などを調べ睡眠時に生じている無呼吸状態を評価するものです。

この検査は病院によってことなりますが、おおよその費用は自己負担で15000~30000円程度です。また、確定診断が下されると、CPAP治療が開始されますが、機械の貸し出しを受けるため、定期的な受診が必要となり一月に自己負担で5000~10000円ほどの費用がかかるのが相場になっています。

おわりに:思い当たる症状がある場合は、早めに医療機関に相談を

日常生活への影響のみにとどまらず様々な身体的な疾患を引き起こす可能性のある睡眠時無呼吸症候群は早期に治療をすることが早期改善の一歩となります。家族に睡眠中の無呼吸を指摘されたあるいは日中に眠気があるという場合は、早めに専門的な医療機関を受診しましょう。

この記事に含まれるキーワード

精神疾患(9) 不整脈(48) 高血圧(132) 虚血性心疾患(16) 多血症(4) 脳血管障害(6) 睡眠時無呼吸候群(2) 睡眠時無呼吸候群合併症(1)