記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/26 記事改定日: 2018/8/10
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食中毒を引き起こす原因微生物には、O157やサルモネラ菌、ノロウイルスなど様々なものがあります。この記事では、原因微生物の特徴と食中毒の原因となる食品について、O157を中心に解説しています。食中毒を予防するための参考にしてください。
食中毒は、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食物を摂取することによって、下痢や腹痛、発熱、吐き気などをもよおす病気です。食中毒の原因によって、病気の症状や発症までの時間は多様です。
食中毒が発生しやすい時期は、細菌が原因の場合、気温が高く、細菌が育ちやすい6月から9月ごろです。ウイルスによる食中毒は冬に流行します。
食中毒を引き起こす原因微生物には下記があります。
O157とは、「腸管出血性大腸菌」の一型であり、感染すると体内でベロ毒素を産生するのが特徴です。
ベロ毒素は腸管粘膜の細胞にダメージを与え、タンパク質合成を阻害する働きを持ちます。その結果、腸管粘膜の細胞が傷ついたまま再生することができず、下痢や血便などの症状を引き起こすのです。
O157は牛肉やたい肥を利用した生野菜などに多く付着しており、これらの食材を加熱をせずに摂取すると感染します。また、感染者の便を介して他者に感染を広げることもあります。
O157感染症は、発熱・下痢・腹痛などの症状を引き起こしますが、重症化すると激しい血便が見られることがあり、脳症や溶血性尿毒症症候群などの重篤な合併症を引き起こして死に至ることもある非常に恐ろしい感染症です。
家畜は腸の中に病原性大腸菌を持っていることが多いため、病原性大腸菌は肉の表面に付着します。
ひき肉は、肉をミンチにする段階で大腸菌が内部に入ってしまうため、加工したひき肉料理の中心まで十分に火が通っていないと、食中毒を起こす可能性があります。病原体を死滅させるため、自宅で調理する場合はしっかり中まで加熱するようにしましょう。肉の内部の温度を75度にして1分間以上加熱し、肉汁が透明になり中心部の色が変わったタイミングが目安になります。
卵による食中毒の原因菌として有名なのは、O157ではなくサルモネラ菌です。この菌は、少量でも食中毒を発症し、乾燥に強い性質があります。牛、豚、鶏などの食肉にも含まれますが、特に注意したいのは、卵の殻など、感染者が調理する過程で”手”を介して「二次汚染された食品」です。
すなわちサルモネラ菌はもともと家畜の腸管内に生息しており、鶏の産卵時は卵の殻に付着して出てきます。
このため、卵の殻に触れた場所からサルモネラ菌が増殖する恐れがあります。卵の殻を割ったら、調理の前に手を洗うよう心がけましょう。また生卵の場合は、殻の外側を触った手や調理器具が中身に接触することを防ぐため、そのまま同じ皿に割り入れて食べるといった習慣を避けましょう。
O157と同様、感染しないように十分注意しましょう。
腸管出血性大腸菌O157に感染すると、頻回の水様便で発病し、その後、激しい腹痛と水溶性の下痢、血便がみられます。潜伏期間は3~8日とされ、抵抗力が弱い感染者の場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重症合併症を発症することもあります。
O157による感染症が疑われるときは、必ず医師の診察を受けましょう。薬についても自己判断で服用しないことが大切です。これは、下痢止め薬や痛み止め薬の中には、毒素が体外に排出されにくくするものもあるためです。
一般的な治療法は、下痢の治療と同様、安静、水分補給、消化しやすい食事の摂取などです。また抗生物質を使って治療することも有効とされていますが、使用するかについては症状や状態を考慮して決定されます。
O157感染症は食品を介しての感染と、感染者の便を介しての感染がありますが、それぞれの予防対策には次のようなものが挙げられます。
牛肉などの肉類や生野菜、井戸水などの混入している可能性がありますが、しっかり加熱することで菌を死滅させることが可能です。
肉類は加熱し、特にハンバーグなどは中心部までしっかり火が通っていることを確認してから食べるようにしましょう。サラダなど、生食する食材はしっかりと流水で洗浄することも大切です。
また、これらの食材が付着した包丁やまな板、菜箸などは菌が付着している可能性がありますので、その都度洗浄し、なるべく他の食材につかないようにしましょう。
感染者の便には菌が含まれています。このため、感染者が排便後、手に付着した菌がドアノブや水洗レバー、電気スイッチなどに付くことがあり、これを他者が触ることで感染が広がることがあります。
家族内や職場など身近に感染者がいる場合には、手洗いや手指消毒を徹底するだけでなく、便座やドアノブなどの人の手が触れやすい場所をこまめにアルコール消毒するとよいでしょう。
O157のこわさは漠然と認識していても、感染源は意外な食品にまで潜んでいるということを知らなかったという人もいるのではないでしょうか。食中毒の危険とは隣り合わせといえます。手洗いや加熱などを気をつけると同時に、かかってしまった場合は重篤化する前に適切な治療を受けましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。