記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/29 記事改定日: 2019/2/5
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
骨粗鬆症は、骨の強度が低下してしまうため骨折のリスクが高まります。高齢者に発症することが多く、骨粗鬆症が原因の骨折は寝たきりに直結する可能性があるため注意が必要です。
この記事では骨粗鬆症の薬物治療について解説しています。薬の効果や副作用、服用期間中の注意点についてお伝えしているので参考にしてください。
骨粗鬆症の治療薬は近年新しいものが登場してきており、進行状況に応じてさまざまなものが選べるようになってきました。
治療薬は、大きく3種類に分類されます。
一つ目が骨吸収を抑制する薬です。
骨は、新しい骨を作る働き(骨形成)と古い骨を壊す働き(骨吸収)を繰り返すことで骨を作り変えています。骨吸収が、骨形成よりも上回ると、骨粗鬆症が進行してしまいます。
そこで、薬で骨吸収を抑制することで骨粗鬆症を治療します。骨吸収を抑えることで、骨形成されやすくなり、密度の高い骨が生成されます。
二つ目が骨形成を促進する薬です。先ほどの骨吸収を抑制する薬とは逆の働きで、骨形成を促進することで、密度の高い骨の生成を促進します。
三つ目が、カルシウム製剤です。骨の主成分はカルシウムです。カルシウムが不足すると、骨の組織がスカスカになってしまいます。カルシウムを補充することで密度の高い骨を作ります。
ビビアント®は、閉経後に起こる女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下によってバランスを崩した骨代謝を正常に近づける作用があり、骨量低下の改善や骨折の危険性を減らす効果が期待されます。
主な副作用としては、血管拡張(ほてり)や筋痙縮などがあるといわれており、まれに静脈血栓症がみられます。
ベネット®は骨を壊す細胞である破骨細胞のはたらきを抑制し、骨の破壊を防ぐための薬です。ライフスタイルに合わせて剤型を選ぶことができ、2.5mg(毎日服用)、17.5mg(週1回服用)、75mg(月1回服用)の3種類があり、服用の手間が少ない週1回や月1回が好まれています。
副作用の多くは下痢や便秘、胃不快感、消化不良などの消化器症状です。
服用の注意点として、服用後30分は横にならないようにすることなどがありますが、これはベネット®に、胃や食道への刺激性があるためといわれています。
プラリア®は骨量の減少を抑制し、骨密度の増加によって骨折を予防します。2012年10月現在、世界60以上の国や地域で承認されている薬です。プラリア®の最大の特徴は半年に1回の投与により、優れた骨折抑制効果が確認されていることといわれています。
主な副作用として、低カルシウム血症、高血圧、背部痛などが報告されています。
ボノテオ®は骨を壊す細胞である破骨細胞のはたらきを抑制し、骨の破壊を防ぐための薬です。1mg(毎日服用)と、50mg(月1回服用)の2種類があり、服用に手間のかからない月1回が好まれています。
主な副作用として、腹痛や血中カルシウム減少、胃不快感などがあります。また服用の注意点として、服用後30分は横にならないようにすることなどがありますが、これはボノテオ®に、胃や食道への刺激性があるためといわれています。
サーム®は、閉経後に女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が低下したことによってバランスを崩した骨代謝を正常に近づける作用があり、骨量低下の改善や骨折の危険性を減らすことが期待されます。
主な副作用として、痒みや発疹などの皮膚症状、乳腺症などの乳房症状があり、稀に静脈血栓塞栓症や肝機能障害があわられる場合もあります。
ボンビバ®は骨を壊す細胞である破骨細胞のはたらきを抑制し、骨の破壊を防ぐための薬です。月1回の投与により1ヶ月間効果が持続する、注射剤と飲み薬の2剤型があります。
注射剤は投与部位への多少の痛みを伴うこと、飲み薬は胃や食道への刺激性があり、服用後60分は横になることができないなどという服用制限があるといわれています。
主な副作用としては、注射剤では背部痛、筋肉痛など、飲み薬では下痢、頭痛、関節痛などが報告されています。
ビスフォフォネート製剤(BP剤)は骨吸収を抑制する薬剤といわれ、骨粗鬆症や関節リウマチ、悪性腫瘍などの幅広い疾患に使用されています。
しかし近年、このBP剤に関連したと考えられる顎骨壊死の報告が多くみられるようになっています。歯周炎などの感染が広がることで排膿が続くことでの上顎骨や下顎骨が壊死や、抜歯などの外科治療を受けた後に骨が露出したままになることです。
このような状況に陥らないためには、BP剤を内服していることを事前に歯科医師に伝える必要があり、治療期間によっては抜歯前に3~6ヶ月の間、BP剤を休薬しなければなりません。
BP剤を服用している場合、歯科医師とBP剤を処方している内科や整形外科などの間で打ち合わせが必要となります。
自己判断ではなく、必ず担当の歯科医師にBP剤を内服していることを伝えましょう。また現在BP剤を服用していない場合でも、今後服用の予定がある方は、可能な限り抜歯などをBP剤による治療開始前に完了しておくことが大切です。
骨粗鬆症は、薬での治療だけでなく運動療法や食事療法も大切になってきます。
運動療法によって、骨密度の増加や筋力増加が期待でき、転倒予防に役立ちます。また運動強度が高いほど骨は丈夫になり、運動の時間が長いほど骨は丈夫になり、運動の種類によっては薬よりも効果的に骨密度の増加につなげることができるといわれています。
ただし、強い運動を短時間で行うよりも、安全で快適な運動を長時間行う方が効果的とされていて、中でもウォーキングは平衡感覚、俊敏性に優れ、運動療法として最適といわれています。
上記以外の例として、室内でできる運動として次の2例をご紹介します。ただし、実施する際は医師に相談し許可をもらってから行うようにしましょう。
食事療法は骨の増強を目的としており、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。特に骨の強化のために、カルシウム、ビタミンK、ビタミンDを積極的に摂り入れましょう。また、ビタミンDとカルシウムを同時に摂取することで、腸管でのカルシウム吸収率がよくなります。
高齢になるにつれ、食べる量が少なくなる、食の好みの変化などによりタンパク質の摂取量が不足する傾向にあります。タンパク質の摂取量の減少は骨密度低下を促すので、意識して摂取するといいでしょう。
ロコモティブシンドロームは、「運動器の障害により、要介護になるリスクが高い状態になること」と定義されています。
つまり、加齢に伴う変形性膝関節症や脊柱管狭窄症などの運動器の病気や、加齢による筋力や持久力の低下によって、身体活動能力が低下し、周囲の支えがなくては活動ができなくなる状態になるということです。
骨粗鬆症は、軽い転倒や打撲などの些細な刺激によって腕や脚、腰などに思わぬ骨折を引き起こすことがあります。その結果、治療過程で筋力が著しく低下したり、長期間の臥床によって正常な部位の関節まで硬くなってしまうなど、身体能力の低下につながることがあります。
骨粗鬆症はロコモティブシンドロームの原因になることがありますので、しっかりと治療を続けていくことが大切なのです。
骨粗鬆症の治療は長い目で取り組む必要があります。効果が表れるまで時間がかかることも多く、効果が出ないことに焦ってしまうこともあるでしょう。しかし、地道に治療を続けることが大切です。投薬治療、運動療法、食事療法をバランスよく取り入れ、継続して治療に取り組みましょう。