記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/1/26
記事監修医師
前田 裕斗 先生
女性の排尿トラブルの代表的なものとして、尿漏れや尿失禁があります。特に、お腹に力が入ったときに漏れてしまう腹圧性尿失禁が多いといわれています。この記事では、腹圧性尿失禁を改善する骨盤底筋トレーニングを紹介しています。
排尿トラブルとは、排尿時に生じる様々な障害のことを指します。突然尿意を感じてトイレに行きたくなる「尿意切迫感」、1日8回以上トイレに行きたくなる「頻尿」(夜間に1回以上トイレに行きたくなる夜間頻尿)などに加え、代表的な症状である「尿漏れ」や「失禁」は次の2種類に大別されます。
1つは、尿意を我慢できずに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」です。この多くは膀胱が過敏になる「過活動膀胱」が原因といわれています。もう1つは、せきやくしゃみをしたときなど、お腹に力が入った瞬間に漏らしてしまう、「腹圧性尿失禁」です。この原因は、「骨盤底筋のゆるみ」にあるといわれています。
尿漏れや腹圧性尿失禁が生じる原因のひとつは、出産によって骨盤底筋がゆるむことにあると考えられています。
また、女性ホルモンが低下する閉経前後は、特に腹圧性尿失禁の悪化しやすい時期といわれています。これは加齢に伴い、骨盤底支持力が低下したり、エストロゲン欠乏から頻尿傾向が強まったりするためです。
なお骨盤底の傷ついた靱帯は手術で補強することができますが、骨盤底筋群の強化は手術や薬では不可能とされます。骨盤底筋トレーニングによって、骨盤底筋群を鍛えることで尿トラブルの改善が見込める可能性があります。
仰向けに寝て、足を肩幅に開き、両膝を軽く曲げて立て、からだをリラックスさせます。その姿勢のまま、1分間に15秒くらいの割合で、骨盤底筋を締めます(これがきつい方は、最初は5秒ぐらいから始めてかまいません)。骨盤底筋は、おならや排便を我慢するときのように肛門括約筋を締めるように力を入れてください。そのときお腹、足、腰などに力が入らないように意識しましょう。1分間の残りの45秒は、全身の力を完全に抜き、このサイクルを10回繰り返します。
慣れてきたら、床に座った姿勢でも可能です。この場合は両膝を軽く開いて立てた状態にして座り、背中は壁に軽くもたれるようにします。足の付け根の股部分(肛門括約筋の近く)に片手の手のひらを当て、骨盤底の位置を自分の手指で確認します。トレーニングの内容は仰向けのときと同じです。
ただし出産して間もない方は、骨盤底の状態をみてトレーニングを始める必要があります。担当の助産師や産婦人科医に、やってよいかどうか確認をとりましょう。開始の目安は、会陰の痛みの治まる時期、骨盤底が回復してきた頃といわれています。
女性は出産に備えて、骨盤内の靱帯や筋肉などが、男性に比べゆるみやすくなっています。骨盤底筋群が弱ることで生じる排尿トラブルは、骨盤底筋運動で自ら鍛えるしか解決策がないとされます。トレーニング方法を身につけるのは難しくないため、日々実践することで排尿の悩みを乗り越えましょう。